一昔前まで、家屋をリフォームする際、ドアは、引き戸から開き戸(いわゆる「ドア」と思っていただいて結構です。)にするのが一般的でした。引き戸は、いかにも古い日本家屋を象徴するものとされてきたからです。確かに、昔の引き戸って、雰囲気的に暗いですし、開けるのも重々しい感じがしますものね。
ところが、昨今になり、開き戸である、ドアから引き戸にリフォームする事例が増えてきました。引き戸のメリットが再評価されてきたからです。これにはバリアフリーの要請も大いに絡んできます。そこで、この記事ではリフォームする際に引き戸を取り入れるメリットを紹介します。
また、そればかりでなく、引き戸を取り入れることの注意点も紹介していきます。
引き戸とは
引戸とは、溝やレールの上を横に滑らせることで開閉する出入口のことを指します。
ドアのように開く場所に物を置けないことがない(デッドスペースがない)ので、決して広いとは言えない日本家屋に広く普及していました。
引き戸にするメリット
かつては古くさいとされていた引き戸がなぜ、現在再評価されているのでしょうか。それは、空間創出能力の高さと、バリアフリーにおける対応能力が優れているからと言われています。
空間を広くつかえる
かつて日本家屋は家の中の仕切りは襖という引き戸によって区切られていました。普段の生活ではプライベートな空間を確保したり、暖房の熱が逃げないようにするため仕切られています。しかし、冠婚葬祭等必要な場合には、襖を取り払うことで広々とした空間を作ることができたのです。
現在では、結婚式やお通夜・葬式はホテルやセレモニーホールで行うことが一般的ですが、昔は結婚式の披露宴も家で行う場合があったんです。また、お通夜・葬式もセレモニーホールが普及するまでは家で行っていました。このように、襖で家の中を仕切ると、必要に応じて広い空間を作り出せることができるのです。
現代では、冠婚葬祭を家で行うことはなくなりましたが、友人や親せきが集まったときに、その時々に応じて広い空間をすぐに作り出せる引き戸の良さが再評価されています。
また、ホームパーティーを行うとき、キッチンとリビングを引き戸で開放すれば、ゲストが自由に食べ物や飲み物を取りに行くことができます。料理を作っているときなど、匂いや、油が気になるときは、その都度、引き戸を締めて仕切りを造れば雰囲気を損なわずに済みます。
車椅子に優しい
引き戸は開き戸に比べて、車椅子の人が出入りしやすいです。開き戸の場合、押して開ける場合なら、ドアノブをひねってそのまま前に進めばいいのですが、引いて開ける場合、ドアノブをもって一回自分の身体の側に引き寄せる必要があります。このとき、車椅子だと身をかわすことが困難です。ですから、ドアを引いた際、自分も後退する必要があります。そのまま開きっぱなしのドアならそのまま通ればいいのですが、ドアクローザーがついている場合、放っておくとドアが自分で閉まって通過できなくなります。場合によっては一人で通れなくて途方に暮れることがあるかもしれません。平常時なら途方に暮れるだけでまだ良いのですが、部屋から脱出しなければならない緊急時、一人でドアを開けて通るのに時間がかかってしまうとなると極めて深刻な危険な状態になりかねません。
これに対し、引き戸は、身体を横に着けて、そのまま引けば、車椅子が戸と密着した状態でも開けることができます。誰かに開けてもらわなくとも、車椅子の人が一人で簡単に出入りできるんです。最近の病院の診察口、入院した際、部屋の出入り口に引き戸が採用されているのも、このような理由からです。
引き戸の場合、下のレールが車椅子の邪魔になるんじゃないかと思った人はいませんか?心配しないでください。吊り下げ型の引き戸なら床はフラットです。車椅子の進行の妨げにはなりません。
引き戸にする際の注意点
以上、引戸に関するメリットを紹介してきましたが、デメリットもあります。以下、紹介します。
遮断性が低い
引戸は開き戸に比べ遮断性が低くなってしまいます。戸を横にスライドさせるという構造上どうしても隙間が大きくなってしまうからです。
ですから、プライベート空間を仕切る場合には適しません、引戸は開き戸に比べ隙間が多く、遮断性が低いので、どうしても音漏れを防ぐことが困難になってしまうからです。
気密性が低い
また、これは特に吊り下げ型の引戸に言えることなのですが気密性が低くなってしまいます。ですから、隙間風が入りやすく、暖房、冷房が効きにくいという難点があります。
また、開き戸と比べ引戸は開いている時間が長くなってしまいますので、これによって空気が逃げてしまいます。
ですから、引戸は大きな閉じた空間の中を仕切る目的の方が有効といえます。
まとめ
いかがだったでしょうか。かつては古くさいとされてきた引戸が現在再評価されている理由がお分かりいただけたでしょうか。特にバリアフリーに対しては引戸はとても有効です。
反面、気密性という課題もありますので、引戸をリフォームに取り入れる際には以上のことを留意していただけると幸いです。