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「コンクリートむき出し」の家に住みたい方へ

「コンクリートむき出し」の家に住みたい方へ


世界的に高名な建築家の安藤忠雄氏による初期代表作に「住吉の長屋」があります。

14坪の敷地面積に建てられたコンクリートむき出しの住宅は、発表された当時(1976年)はもちろん今見ても斬新です。その後も安藤氏はコンクリートむき出しの建築を多数手がけていますし、それらにインスパイアされた美容室やレストラン、ギャラリーなど、コンクリートむき出しの建物は増え続けているようです。

コンクリートむき出しの建物は無機質でオシャレ、力強い独特のムードを持っていますから、人気が高いのはわかります。しかし一方で、住居としてはあまりおすすめできない特徴があると言われます。以下で詳しくご紹介します。
 

住宅には向かないコンクリートむき出し


「コンクリート打ち放し」とも呼ばれるコンクリートむき出しの建物は、見た目がカッコいいというメリットを軽々と上回るほどのデメリットを持っていると言われています。


夏は暑く冬は寒い

コンクリートむき出しの建物に住んだ場合、最大のデメリットとも言うべき点は「夏は暑く冬は寒い」ということ。コンクリートは蓄熱性が高いという特徴があります。上手く断熱してやれば快適な住まいになるのですが、コンクリートむき出しの場合は断熱がおこなわれていません。結果、空調を入れても暖まりにくく冷めにくいのです。夏は暑く冬は寒い、光熱費がかかりすぎる住宅になってしまうでしょう。

「住吉の長屋」の施主さんが、安藤氏に冬の寒さを訴えたというエピソードもあるほどです。それに対し安藤氏が「アスレチックへいけ(運動をしろ)!」と返したとも言われています。


結露しやすい

コンクリートむき出しの建物は気密性が高いという特徴がありますから、湿った空気がなかなか逃げてくれません。部屋が暖かいうちは良いのですが、温度が下がった場合には水蒸気が結露となって現れるのです。断熱をおこなうことや、内装に調湿機能を持つものを用いることで結露は抑えることができるのですが、コンクリートむき出しではそうもいきません。結果、カビに悩まされることにもなるでしょう。


クラックが入りやすい
 



コンクリートむき出しの建物は、仕上げ材を張るなどのごまかしが効きませんから経年劣化がもろに現れます。代表的なものがクラック(ひび割れ)です。高い技術でコンクリートが打たれているならば心配はないのですが、大抵はクラックが発生してしまうでしょう。一旦起こってしまうと補修も難しいですから、付き合っていかざるを得ません。


建物の耐久性が低い

表面の保護材を持たないコンクリートむき出しは、クラック以外にも経年劣化に悩まされがちです。そのままでは雨水が浸透しカビや藻に悩まされることにもなるでしょう。定期的に保護剤を塗るなどのメンテナンスも必要です。
 

コンクリートむき出し「風」で妥協しましょう

以上のデメリットを知った上でも、コンクリートむき出しに住みたいんだ!という方には、もう何もいうことはありません。実際に住んでみるのもよいでしょう。

一方でデメリットは嫌だけれど、コンクリートむき出しにはあこがれるという方におすすめしたいのが、コンクリートむき出し「風」に仕上げることです。住み心地が優れているだけでなく、コンクリートむき出しほどコストもかからないのが魅力でしょう。


コンクリートむき出し風の壁紙にする


サンゲツやシンコール、リリカラといった大手壁紙メーカーが、コンクリートむき出し風の壁紙を製造しています。独特の丸いくぼみが特徴的なものやブロックを積み重ねたようなもの、コテの跡を再現したものなどバリエーションも豊富です。


コンクリートむき出し風の内装ボード

壁紙よりリアルな質感を望むなら、ボードを張るのはいかがでしょうか。内外装に使えるサイディングボードを手掛けているのはニチハ。独特のくぼみも実際に凹ませて再現していますから、見た目はコンクリートとほとんど変わりません。


コンクリートむき出し風のキッチンパネル
 


熱に強いとか、汚れが落としやすいとか、キッチンの壁に用いる高い要求をクリアしたパネルでもコンクリートむき出し風のデザインのものが販売されています。メーカーはユニークな建材を手掛けることで知られるサンワカンパニー。キッチンだけでなくバスルームなどに使用するのも面白いでしょう。
 

まとめ

コンクリートむき出しの家は、見た目のかっこよさには憧れますが、実際に居住するにはデメリットが多すぎるとおわかりいただけたかと思います。壁紙や内装ボードでコンクリートむき出し風のものが造られていますから、それらを検討されることをおすすめします。

ただし、むき出し「風」ではどうしようもないのが満足感。居住性が低くても、本物のコンクリートむき出しの家に住んでいるという大きな満足は何物にも代えがたいもの。ならば、思い切って住んでしまうのもよいかもしれません。先にお話した「住吉の長屋」の施主さんも不便さと折り合いをつけながら、長い間住み続けているといいます。