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圧縮強度から鑑みるモルタルの特徴

圧縮強度から鑑みるモルタルの特徴

リノベーションを検討する際によく耳にするのが「モルタル」という言葉です。実際、モルタル床やモルタル壁、モルタル造形など、モルタルは建築材料として欠かせない存在です。最近人気の土間やコンクリート壁、少し高級感のある家の外壁やレンガの接着剤にもモルタルはよく使われます。

モルタルはコンクリートの一部として扱われることもあれば、表面仕上げ材としてコンクリートとは別に取り扱われることもあります。

この記事では、モルタルの特性のうち圧縮強度について解説します。
 

モルタルとコンクリートの違い

圧縮強度から鑑みるモルタルの特徴


同じコンクリートの色を有しているモルタルですが、コンクリートとモルタルは似て非なるもので、その強度も違えば用途も違います。一般社団法人セメント協会によれば、コンクリートとモルタルの素材は次の通りであり、その違いは粗骨材が含まれているかどうかになります。

    コンクリート・・・セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)
    モルタル・・・・・セメント、水、細骨材(砂)

・参考:一般社団法人セメント協会、コンクリートとは

粗骨材の有無により、コンクリートが凝結した時の固さや表面の滑らかさに違いが生まれます。また、乾燥した時の収縮度合いや、材料の分離抵抗性などにも大きな違いがあります。

分離抵抗性とは素材の分離しにくさを指します。コンクリートのようないくつかの素材が混合された建築材料は、そのまま放っておくと素材同士が分離してしまいます。コンクリートを打設する前によく撹拌させるのは、素材の分離を防ぐためです。

モルタルは粗骨材が含まれていないため、コンクリートよりも分離抵抗性が高いと言われています。この特徴を活かしてレンガとレンガの繋ぎや、コンクリート壁・床の修復によく利用されています。また、粗骨材を含まないことから滑らかな表面加工が可能であり、土間の床や駐車場、お庭といった表面を滑らかに仕上げたい場合にも頻繁に活用されます。

反面、モルタルはコンクリートよりも圧縮強度が低く、建築構造の骨組みである構造躯体に使われることはほとんどありません。コンクリートの強度は、粗骨材の影響によるところが大きく、粗骨材のないモルタルは、コンクリートよりも乾燥収縮によるひび割れや亀裂を起こしやすいと言われています。

一般的に住宅構造物では、住宅の屋台骨を支える構造躯体についてはコンクリートを使用し、表面加工といった仕上げをする際にはモルタルを使用することが多いようです。
 

圧縮強度とは

圧縮強度から鑑みるモルタルの特徴


圧縮強度とは、圧縮荷重によって材料が破壊する耐力のことで、コンクリートの品質既定の一つとされています。

モルタルの圧縮強度は、その素材である水とセメントの比率により変化するため強度の調整が可能です。一般的に、水よりもセメントの含有率が大きいほど圧縮強度が強くなります。モルタルの配合設計では、水/セメント比率を重視し、セメントと水和反応を起こす最低限の水分割合を理想として調合されます。

また、細骨材の割合や成分についてもモルタルの圧縮強度に影響します。実際、モルタルに占める細骨材は、水やセメントよりも大きな割合を占めます。このことからも、モルタルの性質は細骨材に大きく左右されます。

モルタルとコンクリートの強度比較においては、ヤング率(ヤング係数)を用いることがあります。ヤング率とは、ある物体に力を加えた時、その物体にどれだけのひずみが生じるのかを示したもので、ヤング率が大きいほど強固な物体であるとされています。

一般的に粗骨材が含まれているコンクリートの方が、モルタルよりもヤング率が大きい傾向があります。しかし、最近ではモルタルの分離抵抗性の高さを活かした構造躯体用のモルタルも研究されており、骨材の配合量によってはコンクリートの圧縮強度にひけを取らない構造躯体用モルタルも開発されています。
 

まとめ

一般的に、モルタルはコンクリートよりも圧縮強度が低い傾向にありますが、最近ではコンクリートに引けを取らない強度を有する「構造躯体用モルタル」も研究されていることから、以前よりもモルタル利用の選択肢が広がってきているようです。

リノベーション時においては強度だけでなく、仕上げ(デザイン)、コストなど全体のバランスにより選択すると良いでしょう。


参考文献
・寺西 浩司、谷川 恭雄、清水 厚年:構造躯体用モルタルの強度特性および乾燥収縮. コンクリート工学年次論文集、31(1)、2009.
・渡邉 悟士:コンクリートの圧縮強度に対する骨材の影響について. 公益財団法人日本コンクリート工学会、月刊 コンクリート技術、10月号、2017.