近年、合成樹脂を伴った化学塗料が塗装をするうえで主流となってきました。化学塗料は、安価で耐久性も高く、なおかつ施工期間も短いという特徴がありとても便利と言われます。でも、その反面、健康被害についても耳にすることが多くなりました。例えば、化学物質を原因とするアレルギーです。シックハウス症候群が代表例ですね。
そこで、このようなアレルギー症状がでない天然の素材を原料とした自然塗料が化学塗料に比べ、とくに小さなお子様に安全という理由で評価されてきました。
ですが、自然塗料と言っても多岐にわたります。また、日本では自然塗料の定義があいまいとの状況もあるようです。そこで、この記事では自然塗料を紹介しつつ、メリット、デメリット、注意すべき点を紹介していきます。
自然塗料とは
自然塗料とは、天然の素材を原料とした塗料です。化学塗料のように石油や合成顔料を原料としない点から、人間の体に優しいとされています。
自然塗料の原料で代表的なもののひとつは柿渋です。天然の青柿から抽出した塗料で防腐、防水効果があると言われます。ただ、臭いが強いのが欠点でしたが、近年、臭いを抑える技術によって気にならないレベルにまで抑えたものも登場しています。自然塗料の原料として他には、白ロウ、桐油、カルナバロウ、蜜ロウ、ラベンダーオイルなどが挙げられます。どれも人や環境に優しいとされており、多くのメーカーから発売されています。
ただ、自然塗料と言っても絶対に身体に安全なのかというとそうでもなく、アレルギー源であるホルムアルデヒトやVOCを発生させる種類もあるので、事前に確認する必要があるでしょう。
自然塗料の種類
自然塗料の種類にはオイル系とワックス系があります。オイル系は素材の上にコーティングします。汚れから守ることが目的です。ワックス系は素材に塗り込むことによって木目の質感が浮かび上がりしっとりとした仕上がりが特徴でしょう。
自然塗料のメリット・デメリット
「身体に優しい」に代表されるメリットが多い自然塗料ですが、デメリットもあります。以下、紹介していきます。
メリット
自然塗装のメリットとして、まず着目すべき点は木の素材を活かしたぬくもりのある仕上がりでしょう。また、化学塗料と違い経年変化します。これが、時間と経過とともに何とも言えない味わいを出してくれます。時間が経てば経つほど使い込まれた風合いがでます。
また、自然塗料の主成分は天然素材ですので、アレルギー反応が出にくい点もメリット。健康配慮の点から、快適な生活に貢献してくれるでしょう。
デメリット
自然塗料のデメリットのひとつは、化学塗料と比べて割高である点です。原料が天然素材ですので大量生産が難しいというのが理由とされます。さらに、化学塗料と比べて乾燥時間がかかります。その結果、施工期間が長くなりがち。施工期間が長くなるということはその分、工賃アップにもつながります。そういう意味でもコストがかかってしまうでしょう。
また、自然塗料は経年変化し、それが味わいにもなるのですが、変化し続けると劣化につながります。したがって、自然塗料は化学塗料と比べて耐久力という点で一歩及ばないと言われます。耐久力が低いということは、日々のメンテナンス、つまりこまめな拭き掃除も必要です。
さらに、原料が天然素材と言っても、ホルムアルデヒトというアレルギー原因物質は発生してしまいます。そういう意味では身体に対して完全に安全とは言い切れないことも覚えておきましょう。
自然塗料選びの注意点
自然塗料というと原料は全て天然物質でアレルギーに対しても安全というイメージがあります。ところがわが国ではそうでもないとも言われます。どういうことでしょうか。以下、説明します。
日本では自然塗料の定義があいまい
実は日本において天然塗料としての明確な定義はありません。これに対してドイツでは原料に天然素材以外のものを使用した塗料は自然塗料と名乗れません。自然「系」塗料という名称になります。
ただ、天然素材以外のものといっても、イソパラフィンは、石油を精製したといっても毒性・臭気性は極めて低いとされます。化粧品にも入っているくらいですから。日本で、ドイツでいうところの自然「系」塗料が自然塗料として流通している点はあまり神経質にならなくてもよさそうです。
天然素材が原料というだけで安心できない
自然塗料を選ぶ人はシックハウス症候群が起きないよう、気を使っている場合がほとんどです。でも、自然塗料の中には塗装して、乾燥する間にホルムアルデヒドを発生させるものもあります。ホルムアルデヒトとは、アレルギーの素になる物質で、空気中に散布されると目がチカチカしたり、喉がヒリヒリする方もいます。
自然塗料を選ぶ際には、実際に匂いを嗅いでみるなりして事前に確認したうえで購入するとよいでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。自然塗料と言っても様々な種類があることがお分かりいただけたでしょうか。また、アレルギーとの関係でも、自然塗料というだけですぐに購入するのではなく、事前によく確認したうえで塗装するかどうか決めてくださいね。