住宅をリノベーションしたり購入する際に、多くの方が悩むことのひとつが間取りではないでしょうか。賃貸住宅ならば、部屋数が足らなくなったら引っ越しで解決もできますが、購入となるとそうはいきません。間取りを一度決めたら、一般的には数10年は住み続けなければならないでしょう。
ここではまず、ちょうどいい部屋数の伝統的な考え方について解説します。次にライフスタイルによって、ちょうどいい部屋数は変化することについてご紹介しましょう。
部屋数の伝統的な考え方は「家族の人数+LDK」
ちょうどいい部屋数について、住宅業界に昔からある定説は「家族の人数+LDK」と言われます。夫婦と子ども1人の3人家族なら、3LDKの間取りをすすめられることが多いようです。内訳はLDKに夫婦の寝室、子ども部屋、プラス1部屋です。
なぜ「プラス1部屋」が必要になるのか?
家族の人数+LDKの話で、多くの方が疑問を感じるのが「プラス1部屋」についてです。「夫婦の寝室と子ども部屋にLDKで十分じゃないの?」と思われる方も多いでしょう。しかしプラス1部屋があると、暮らしがずいぶん便利になるのも事実。
たとえばプラス1部屋は、ご親戚や友人が泊まりに来た場合などに客間としても使えます。注目が高まっている書斎やワークスペースとしても使えますし、子どもがもう1人増えた場合には子ども部屋としても使えるでしょう。客間を基本としたユーティリティスペースをプラスしておくという考え方ですね。
「プラス1部屋」は和室がおすすめ
多目的に使うための1部屋のおすすめは和室でしょう。和室なら布団を敷けば寝室、ちゃぶ台を出せばダイニング、文机を置けば書斎とマルチに使えます。プラス1部屋で和室をしつらえておけば、大抵の目的で使えますから便利なスペースとして重宝するでしょう。
子ども部屋の扱いをどうするか?
それなりに説得力がある家族の人数+LDKという定説なのですが、近年のトレンドとはそぐわなくなってきたようです。トレンドとは「子ども部屋不要論」。子どもの数だけ独立した部屋を与える必要はないという考え方です。
背景にあるのはリビング学習の流行
2017年に発売された本「東大脳の育て方」には、東大生へのリサーチ結果として「83%がリビングで勉強していた」とありました。以来、住宅業界で流行りだしたのがリビング学習という考え方。ダイニングテーブルやキッチンに設けたカウンターで勉強するというものです。
これで不要とされるのが勉強部屋としての子ども部屋です。しかし、寝室や収納を主にしたスペースは必要ですから4畳くらいのスペースを確保。床面積はずいぶんと狭くて済んでしまうでしょう。また、子ども1人につき子ども部屋1つは不要で、きょうだい2人に1部屋を割り当てれば十分という考え方も見聞きします。
引きこもり対策のために
「子ども部屋不要論」は大きな社会問題となっている、引きこもり対策としても説得力があります。必要以上に居心地のよい子ども部屋を造ってしまうと、そこから出てこなくなるというのです。
しかし子ども部屋ではなく寝室と収納のスペースにすれば、こうはいかないでしょう。勉強はしないとしてもリビングで過ごす時間は増えますから、家族間のコミュニケーションが密になり、引きこもってしまう心配が少なくなる効果も期待できます。
書斎に1部屋を割り当てる?
子ども部屋が不要という声とは逆に高まりを見せているのが、在宅ワーク用の書斎が必要という声です。確かに独立した一部屋は仕事に集中できますし、趣味を楽しむ部屋としても活用できそうです。
子ども部屋が不要ならば書斎も不要?
とはいえ在宅ワークに必要なものは、資料を置くスペースと机くらいでしょう。予算と間取りに余裕がない限り、わざわざ1部屋を割り当てる必要はないかもしれません。リビング学習と同じように、ワークスペースをリビングの一角に設ければよいという間取りも注目されているようです。
ちょうどいい部屋数はライフスタイルで変化する
子ども部屋と書斎に共通するのは、ずっと使うわけではないということです。
子ども部屋は子どもが進学などで家を離れれば不要になります。また、在宅ワーク用の書斎も現状では必要とはいえ、このようなワーキングスタイルが定着するかどうかは、不透明と言えるでしょう。
ならば、子ども部屋も書斎も設けるにしても仮のスペースで良いのではないか?という考えも浮かびます。リビングのスペースを可能な限り広く取り、一角を仕切って子ども用の寝室兼収納スペースにしておけば、子どもが家を離れたらすぐにリビングの一部にもできます。
独立した書斎が必要だというならば、少し妥協してパーテーションで区切るのはいかがでしょうか?天井まで届くものならば個室感が増しますが、不要になった際には撤去するのも簡単です。
同じ住宅に数10年住み続けるとして、その間ライフスタイルは変化します。それに従って、ちょうどよい部屋数も変化しますから、リノベーションで対応できるような間取りにすべきでしょう。
まとめ
家族の人数+LDKで部屋数を考えるというのは確かに説得力もあります。
しかし、子ども部屋の扱いの変化や書斎へのニーズの高まりから、部屋数の考え方についても変化が見られることも事実でしょう。
また家族の人数やライフスタイルも不変とは言えません。子どもはいずれ独立するでしょうし、ライフスタイルも変化していくものです。ですから部屋数についても柔軟さが求められるでしょう。壁の撤去を前提に間取りを考えたり、1部屋を割り当てるのではなくパーテーションで区切っての対応も検討することをおすすめします。
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