みなさんにとって、洗面所はどんな場所ですか?
意識して考えたことはないけれど、
“思わず笑顔になるくらい嬉しいことがあった日”も、
”つらくて悲しい気持ちで帰宅した日”も、
どんな時も自分と向き合えたり、整えてくれる洗面所。
毎日使う場所だからこそ、自分なりのこだわりを持って選ぶことで
朝の支度時間やお掃除の時間まで楽しくなるかもしれません。
今回ご紹介するのは、イブキクラフト(伊吹物産株式会社)の”エッセンス”。
“暮らしは楽しくあればいい”というモノづくり思考から生まれた水回りのブランドです。
ブランドの歴史からこだわりや製品に込められた想い、
今後の展開までエッセンス事業部の堀内さんにお話を伺いました。
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もくじ
イブキクラフト「エッセンス」の始まり
生活を楽にしてくれる機能性と、暮らしを豊かにするこだわり。
そんな”心地よさのバランス”をベースに、リアルな目線で考えたモノづくりを50年以上続けてきたイブキクラフト。
ーどのような歴史を経て、現在の”エッセンス”に繋がっていったのでしょうか?
「もともとは、雑貨の輸出業が始まりなんです。戦後、中部地方で盛んだった陶磁器、刃物、木工などを輸出していました」と堀内さん。
戦後、激しく変わりゆく時代の変化に対応しながら、当時未開拓であった東南アジア諸国からの
雑貨輸入など様々な事業も展開。
「1990年には、のちのち水回り製品を作る大きなきっかけとなる
雑貨事業「マイスターハンド」がスタートしました」
ーどのようにして水回りの製品を作るようになったのでしょうか?
「当時、家庭洗面所の蛇口をおしゃれなものに交換するのが、世間で流行ったんです。
その時代の流れに合わせて、雑貨事業でも”陶器の蛇口ハンドル”を作るようになりました」
ー家庭で楽しむ雑貨のひとつとして”蛇口ハンドル”を販売されていたんですね。
「その蛇口ハンドルのデザインを気に入ってくださった方から、
『同じデザインで洗面ボウルなどは作っていないのか?』とお声といただくようになったのが
水回り製品の始まりです。
そんな流れから、2000年にイブキクラフトの『エッセンス』事業が始まりました」
ー“蛇口ハンドル”が、イブキクラフトの未来の鍵を握っていたんですね・・・!
「創立当初から、雑貨の輸出や輸入、紅茶の販売、水回り製品の生産・販売と様々な展開をしてきていますが、
どの事業も『購入した先にある生活が楽しいものになるように』という軸は変わっていないんです」
ー“暮らしは楽しくあればいい”というコンセプトにも繋がりますね。
「エッセンス」を代表する商品
実際にどのような商品があるのか、見ていきましょう。
- スタンドユニット
ホテルライクな暮らしが叶いそうなシンプルな洗面ユニット。
生活動線を考えたコンパクトなユニットがエッセンスブランドの魅力のひとつです。
- カウンターユニット [クラシック]
シンプルな天然無垢のカウンター。
人気の四角い洗面器やオーバル型、水栓の形、スタンドなど好みに合わせてカスタマイズできるので
暮らしに合わせた取り入れ方が可能なのだそう。
- オールドイングランド
雑貨事業からの流れを感じさせるノスタルジーな花模様の洗面器も。
家の中の小さなスペースでも、好きな柄を取り入れると毎日の気分があがりそうです。
どの商品にも共通する「エッセンス」の魅力
ーこれまで約20年間エッセンスで働いてこられた堀内さんから見た”魅力”を3つ教えていただけますか?
1. 使えば使うほど味が出る素材
「錆びたり傷がついたりせず、綺麗な見た目を維持できる商品が選ばれることが
一般的だと思いますが、エッセンスの商品を愛用してくださる方は、
使えば使うほど出てくる『味』を楽しんでくださる方が多いです。
革製品が使えば使うほど、味がでてくるような…
例えば、真鍮の素材などむき出しのまま使用しているものなど。
変色やくすみなどをどんどん使うことで磨き上げて、
完成させていくという考え方もエッセンスの提案のひとつです」
経年変化を味わって、自分たちの手で完成させていく。
使えば使うほど、どんどん愛着が湧いてきそうですね。
2. 単品ではなく、空間作りを提案できる
「手洗い場所をエッセンス商品で統一コーディネートできるのも、大きな魅力です」
先ほどの商品でもわかる通り、蛇口部分や洗面器、洗面台、排水管と様々な組み合わせができるんですね。
「『この洗面ボウルに合う蛇口が欲しい』などお客さんからの要望をいただくようになり、
デザイナーが色や形の展開を考えて作っています。
そういった部分でもコーディネートができるようにデザインされているので、
エッセンスの商品だけで統一感のある空間作りを楽しんでいただけるんです」
自分だけのこだわりの洗面所。
コーディネートできるなんて、想像するだけで楽しい!家づくりの醍醐味ですね。
3.「作りやすい」ではなく「作りたい」デザインを貫く
「作り手としては大変なものであっても納得いくまで作り抜くのが、“エッセンスらしさ”です。
一般的には量産することを前提として、工場が作りやすいものをデザインすることが多い業界なのですが、
時間がかかったとしても形や素材、例えば曲線具合にこだわるなど、
一筋縄では作れないものがほとんどです」
作りやすいものを量産するのではなく、時間がかかっても良いと思うものを生み出す…
エッセンスブランドのこだわりやクオリティが感じられます。
開発に4年!?完成時には涙した商品とは…
ー時間がかかっても、作りたいものを生み出すという背景には、
並々ならぬ企業の努力が感じられますが、
そういったエッセンスらしさを体現している商品があれば教えてください。
「”Mオーバル洗面器”という商品です。
こちらの商品は、最初の交渉から完成まで4年もかかりました」
4年…!?どういったところに時間をかけられたんですか?
「本格的な衛生陶器を作り始めたタイミングなんですが、
それまでは食器製造でお願いしていた陶器工場としかお付き合いがなかったため、
私たちのこだわりを形にしてくれる衛生陶器メーカーと出会うのにとにかく時間がかかりました」
今までとはちがった工場とマッチングするのに時間がかかり、
そこからまたさらに生み出す努力を重ねられたんですね。
「工場の担当者の方も、よくここまで付き合ってくださったなと思います。
試作品を初めて見たときは、嬉しくて思わず涙が浮かびましたね。
このメーカーさんとの出会いから、エッセンスが展開できる商品の幅も広がりました」
涙が出るほどに想いが募った製品。こういった背景は、ユーザーの愛着にも繋がりそうです。
他にも、エッセンスをらしい商品があれば教えてください。
「”リズ混合栓”もそうですね。こちらは、発表してから販売を開始するまで約2年かかりました」
混合栓 リズ 2ハンドル
2年!こちらも大変だったんですね。どんなところで苦労されたんでしょうか?
「こちらの商品の場合は形がとても複雑なんです。
そのため製造段階で水が漏れるなど不具合が多かった。
鋳物を流し込む工程での温度や調合を繰り返し調整するなど、
製品が成立するのに時間がかかりました。
本当に根気強くお付き合いいただき、ようやく販売に至ったという経緯があります」
ついに販売、手のかかるアイテムであれば、喜びもひとしおではないでしょうか
「それが、販売されてからも一筋縄ではいかず…喜んでいられませんでした。
実際に製造が開始すると、今度は工場で量産することになります。
サンプルで一点ずつ作るのとはまた異なるので、そこでトラブルが発生し見直しが必要になりました。」
そういった紆余曲折があっての開発だったのですね。
それでもわざわざ複雑な構造の水栓を造るといった、「ないものを創造する」のがエッセンスの魅力なのかもしれません。
営業担当・堀内さんから見た「エッセンス」とは?
「自分の想いをちゃんと込められるものじゃないと、売ることができないんです」とおっしゃる堀内さん。
ーデザイナーや製造工場、お客さんと関わる立場にある営業担当の堀内さんから見たエッセンスとはどんなブランドでしょうか?
「色々な暮らしのスタイルにあわせて、選ぶことを楽しんでもらえるブランドだと思います。
エッセンスが販売をしている商品は、全てが生活の一部になるので、”商品を売る”ことよりも、
使った先にある生活の豊かさを提供することをゴールにしています」
ー生活の豊かさを提供するためにされていることはどんなことですか?
「他社が作っているものと競争して量産していくのではなく、どうすれば機能性とデザイン性が心地良いものになるのか
こだわりを捨てず、ひとつひとつ納得できるまで作りたいものを作っていくスタイルを貫いていることだと思います。
全て自社でデザインをして、形に起こして、商品を生み出す流れで、オリジナルのものしか販売していないので、
関わるスタッフみんながそれぞれの熱い想いを持って商品に接しています」
ーその「想い」が詰まっていると感じられる場面はどんな時ですか?
「カタログの写真にしても、一枚一枚デザイナーがどんな風に見てもらいたいかを考えてスタイリングをして、
撮影しているんです。その写真を見てくださった方が、生活に取り入れた時の姿が想像しやすいので、
『この写真のまま作って欲しい』というお声もいただくことが多いんです」
ー「写真のまま作る」というのは?
「デザインがオリジナルなため、洗面ボウルや水栓だけでなく、“カウンターユニット”といってカウンターなどもあわせてご用意しています。施工者にとっても経験のない新しいものを工事するのには労力がかかります。必要な部材を整えることで、施工しやすくなり、使いたいと思っていただける方の手元に届きやすくなるという考えからです。」
今後の展開について
ー「エッセンス」の今後の展開について、何か計画があれば教えていただけますか?
「やはりこの一年で生活様式が大きく変わって、玄関まわりに『小型洗面所』を設置する方がとても多くなりました。
今までお手洗いに設置するものは作っていましたが、小型混合水栓を強化していこうと考えております。」
リノベーションでも、玄関周りに洗面所を設置される方が増えていますね。
どのようなデザインやこだわりが込められたものになるのか、楽しみです。
最後にメッセージ
「エッセンスの製品は、くすみがでたり変色したりと経年変化していきますし、
大手メーカーさんのようにものすごく便利!という機能性があるわけではありません。
ですが、暮らしの中でアイテムたちが変化していくことをあえて楽しんでいただけると、
どんどん愛着が湧いてくると思います。実際に水を使って試せるショールームも用意しておりますので、
家づくりを検討される時には是非お越しください。
また、インスタグラムも頻繁ではないですが私が更新していますので、
ご覧になっていただけると嬉しいです。」
まとめ
効率的な量産を前提とせず、どんな時代も自分たちの作りたいものをしっかりとつくる。
工場に大変な労力がかかり、製造に時間がかかっても、
その先にあるユーザーの暮らしが心地良いものになるようにこだわりを貫く。
それがエッセンスブランドの今。
取材中どんな質問を伺っていても、ひとつひとつに静かで熱い”想い”を届けてくださいました。
毎日自分と向き合う洗面所。
こだわらなくても生活はできますが、
使う度に嬉しくなるポイントを作っておくと毎日が楽しくなりそうですね。
蛇口から洗面器、カウンターやスタンドまで統一されたコーディネートで、
センスの良い洗面所をつくってみてはいかがでしょうか?
余談になりますが、取材後実家に立ち寄った際、紅茶好きの母が
いつものように食後の一杯を淹れてくれました。
「砂時計が落ちるのを見ておいてね」と言われ、ふと見ると
「アシュビィズ」の文字。
さらに、淹れてくれた紅茶の種類をきくとイブキクラフトが取り扱う英国紅茶「アシュビィズ オブ ロンドン」のものでした。
取材ですっかりイブキクラフトのファンになっていた私は、
日常の中ですでに出会っていたのだなぁと嬉しくなりました。
もしかしたらみなさんの生活の中にも、イブキクラフトの想いが込もった製品があるかもしれませんね。
クラフトメーカー取材協力
伊吹物産株式会社(イブキクラフト)
エッセンス事業部 堀内啓一郎氏
横浜ショールーム:https://essence-i.com/VR_top.html
HP:https://www.essence-i.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/essence_ibukicraft/
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