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検査済証の記載内容を解説。床面積が書類によって異なる理由も

検査済証は、建物が建築基準法や建築基準関係規定を守って建てられたことを示す証明書です。新築住宅への入居や、既存住宅で増改築や売買をする際に必要となる大事な書類のひとつです。

検査済証には、どのような内容が記載されているのでしょうか。今回は、検査済証の記載事項について解説していきます。後半では、検査済証の床面積が他の書類の床面積と違っている場合について、その理由を説明しますので、気になる方は参考にしてみてください。

検査済証は適法建築であることを証明する書類

建物を利用する人が安心して快適に利用できるように、また建物を建てる地域が人々にとって快適な環境であるように、建築基準法や建築基準関係規定では、建物に対する最低限守らなければならないルールがまとめられています。このルールを守って建てられた建築物であることを証明するのが、検査済証です。

新しく建物を作る時、工事を始める前に建物の設計図や敷地の使い方についての書類が審査され(建築確認)、建築基準法・建築基準関係規定に適合していることが認められれば着工することができます。

工事が完了したら、事前の申請通りに法律を守って建物が建てられたかどうかを専門家の検査員がチェックします(完了検査)。このチェックに合格すると、検査済証が交付されるのです。

検査済証の例外に注意

検査済証はあるが建物が適法でない
検査済証があっても、その建物が法律に適合していないこともあります。新築時に検査済証が交付された後、適法でない手段によって増改築が行われてた場合などがその例です。その場合には「違法建築」として扱われ、直ちに法律にあわせて改修するよう求められるでしょう。

一方で、建物が完成した後に法律や地域の都市計画が変更されたなどの理由で、定められた要件を満たせなくなってしまった建物は、「既存不適格」として条件付きの現状維持が認められています。

検査済証が無い建物もある
ある程度築年が経った戸建て住宅では、検査済証が交付されていないこともよくあるとされています。今でこそほぼすべての新築の建物は完了検査を受けていますが、1990年代以前は完了検査を受けていない建物が少なくなかったという調査結果もあります。建物の現状が法律に適合していることを証明するには、専門家に調査を依頼して報告書をまとめてもらうことになるでしょう。

また、検査済証が交付された建物でも、持ち主が何度も変わるなどして検査済証を紛失してしまうケースも考えられます。一度検査済証が交付されているならば、管轄の自治体に記録が残っていますので、代わりとなる証明書を発行してもらうことができるでしょう。

参考:「検査済証のない建築物の流通促進」について(国土交通省第30回地域活性化ワーキング・グループ資料1-1)

検査済証の記載事項から分かること

検査済証にはどのような内容が記載されているのでしょうか。検査済証を取り寄せた時にチェックしておきたいポイントを見ていきましょう。

建築基準法で示されている検査済証の様式では、次のような項目が記載されています。
・検査済証番号、検査済証の交付年月日
・確認済証番号、確認済証の交付年月日、交付者
・建築場所
・検査した建物の概要
・検査をした建築主事や確認検査員の氏名

検査済証や確認済証の番号、交付年月日
確実にチェックしておきたい項目は、検査済証や確認済証の番号、交付年月日です。

検査済証・確認済証の番号や交付日は、自治体で保管されている建物の情報に紐づいています。検査済証だけでは建物の詳細を知ることは難しいですが、検査済証番号と交付年月日を使って管轄している自治体で建築台帳を調べれば、建築確認時の図面など詳細情報を閲覧することができるでしょう。

また、建築基準関連規定は変更・改定が繰り返されているので、確認済証の日付によって、どの時期の基準を満たしているのかを判断することもできます。例えば、確認済証の日付が1981年6月1日以降であり検査済証も交付されているならば、その建物は新耐震基準に合わせて設計され建設されたと言えます。

また、検査済証の番号があるということは、検査済証が付与されたということであり、それだけでも、完了検査に合格して適法建築として認められたという証明といえます。

検査した建物の概要
建物の用途や構造、階数、床面積などの情報が記載されています。例えば、「専用住宅の用途で使う新築の建物で、木造の地上2階建て、延べ床面積は○○m2」といったことが読み取れるでしょう。

検査済証は、交付元によって書式や表記方法に多少の違いがありますが、この項目は詳細に書かれていることもあれば最低限のシンプルな表記になっていることもあるようです。

参考:建築基準法施行規則(昭和二十五年建設省令第四十号)建築基準法(別記第二十一号様式・別記第二十四号様式)

検査済証の床面積は他の書類と違うこともある

ここでは、検査済証にも記載されている床面積についてご説明していきます。

例えば住宅の売買や相続、リノベーションなど、住宅に係る大きなイベントの際には、必要な書類を揃えることがありますが、検査済証と登記簿謄本や固定資産税納付通知書などの他の書類で床面積が違っていることがあります。

住宅の床面積が変わるかもしれないとなると、問題が出てくることもあります。

まず、容積率や建ぺい率は正しく守られているのだろうかという疑問です。敷地面積に対して建てられる建物の大きさを定めているのが容積率や建ぺい率です。床面積が変わることで、決められた容積率や建ぺい率を超えてしまうことになれば、法律に適合していない建物として改修しなければならなくなるかもしれません。

また、床面積が変わると住宅にかかるコストに影響が出ることがあります。床面積は固定資産税などの課税額の算定にも関係があります。床面積の違いで将来にわたって課税額が変わってくることも考えられます。他にも、減税や優遇措置などの制度には、対象となる住宅の床面積に条件を付けていることもあります。

書類によって床面積が違うのは準拠する法律が違うから

結論から言うと、書類によって建物の床面積が違っていることは十分あり得ることです。その理由は、準拠する法律によって建物の床面積の算出方法が異なっているからです。

確認済証や検査済証の床面積は、建築基準法に基づいて算出された床面積です。登記簿謄本や固定資産税の納付通知書にある床面積は、民法・不動産登記法に基づいて算出されます。準拠する法律によって、寸法の測り方が違っていたり、階段や庇(ひさし)部分の面積の扱いが異なっており、多くの場合、検査済証の床面積は登記簿などの面積よりも大きくなるとされています。

もう一つの可能性として、完了検査や登記の手続きが終わったあとに、増築や減築などによって床面積が変わった、ということも考えられます。必要な変更手続きをしないままでいると登記簿などの書類上の床面積は変わりませんが、自治体の課税課などは独自に現状確認調査を行うことがあり、固定資産税の納付書で床面積が違ってくることになります。

床面積は必ずしも一致しないことを前提に、容積率や建ぺい率を調べるなら検査済証や確認済証の床面積で計算し、固定資産税の税額なら登記簿の床面積を参照する、というように、目的に合った方法で算出された床面積で計算することが重要でしょう。

まとめ

検査済証は、建物の適法性を証明する大切な書類です。記載内容から建物に関する重要な情報も知ることができます。

また、建物の床面積は法律によっても算出方法が異なります。検査済証の床面積と登記簿など他の書類の床面積で数値が違っていることもあり得ると覚えておきましょう。