Column

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

開いても動線を遮らず、バリアフリーの観点からも注目されている引き戸。しかしドアと違い引き戸には種類があり、それぞれに特徴があります。

そこで今回は、引き戸の種類とそれぞれの特徴をご説明します。是非引き戸選びの参考にしてみてください。

スタンダードな「片引き戸」

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

横方向にスライドさせ、壁の手前か奥に戸板を逃がす「片引き戸」。通常「引き戸」と言われて、真っ先に思いつくタイプがこれでしょう。構造もシンプルで、特にリフォームでの付け替えは、ほとんどの場合これになります。

 引き戸は、開けた際に戸板が部屋や廊下に大きく張り出さないため、見えない側にいた誰かに当たるなどの危険がありません。開けた状態を保っても戸板が通行の妨げになることがなく、開閉の動作も小さいため、狭い廊下に面した扉に特に適しています。また、扉の向こうで扉に寄り掛かるように誰かが倒れていた場合、ドアだと開かなくなることがありますが、引き戸だとその心配はほとんどありません。ですから、高齢者の住宅では、特に浴室やトイレに引き戸を採用することも多くなっています。

 デメリットもあります。戸板を引き込む部分の壁は使えません。具体的には、その壁にコンセントや明かりなどのスイッチを付けることができませんし、何かを立てかけることもできません。トイレや浴室などでタオル掛けなどが必要でも、そこには付けることができないので注意しましょう。

ドアと比べると開閉時の音が大きめで、気密性も低いため、音や温度に気を遣う寝室やオーディオルームなどにはあまり向いていません。しかし静音性や遮音性、気密性を改善した商品も多数ありますので、業者さんに相談してみるといいでしょう。

また、すべてのタイプに共通するのですが、引き戸には「レール式」と「上吊式」があります。「レール式」は床にレールがあり、戸板を滑らせて開閉します。安定感がありますが重く感じることもあるでしょう。

構造が単純なので故障に強い点もメリットです。「上吊式」はレールが上側にあり、そこから戸板を吊り下げた形になっています。ちょうどカーテンのような状態です。「上吊式」は床にレールがないため掃除がしやすく、つまずくこともありません。見た目にも開放感、一体感があります。

 片引き戸独自のデメリットとしては、引き込み部が露出しているので、小さな子供さんやペットがそこに入ったりした場合、開閉の際に事故が起こることもあります。また、そこに荷物など異物が入り込んで、開閉の妨げになる場合もあります。しかし、完全に開かなくなることはまずありません。

見た目もすっきり「引き込み戸」

片引き戸の引き込み部を壁の中に取ったタイプの引き戸を「引き込み戸」と呼びます。引き込み部や開放時の戸板が見えなくなるため、見た目がすっきりしているのが特徴です。また、コンセントやスイッチなどの配線もでき、壁自体も使えるため、引き戸特有のデメリットの多くをクリアできます。

 ただし、扉自体にはノッカーをはじめとした、立体的な器具や装飾は付けられません。ポスターなどの薄い装飾もテープなどで直接貼り付けるしかなく、画鋲もツマミのあるものは使えません。引き込み部の「戸袋」の掃除も難しいので注意が必要です。

利き手を問わない「引き違い戸」

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

窓のように2枚の戸板が並んだ「引き違い戸」は、左右どちらからも開けられるのが特徴で、利き手に関係なくスムーズに開閉できます。

デメリットとしては、2枚分の開口部が必要なため、付近の空間を広く空けておかなくてはなりません。

 2枚の戸板が重なる真ん中は、絶対に使えない、あるいは通れないことを利用して、そこにパーティションを置くなどちょっと変わったコーディネートもできます。

大きく開いて出入りがスムーズ「引き分け戸」

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

「引き違い戸」とは逆に、2枚の戸板がそれぞれ離れるように開くのが「引き分け戸」です。「両開き戸」とも。

開けはなった時の開放感は大きく、部屋の出入り口というよりも「和室とリビング」や「リビングとダイニング」などの間仕切りに使われることが多いタイプです。

両側の壁にそれぞれ引き込み部が必要なため、この扉のある壁は、ほとんど使用できなくなるでしょう。もしくは「引き込み戸」にすれば、多少は緩和されます。逆に、扉そのものの大きな存在感を利用して、「見せる」装飾を扉に施すのも素敵です。飾りガラスなどの異素材をはめ込んだり、絵や模様、彫刻などを入れて楽しむことも。

「玄関に引き戸」はあり?

「引き戸」の基礎知識――種類ごとの特徴を知って便利に

 扉の中で最も重要なもののひとつとして、「玄関」があります。そこに引き戸を使うのはありでしょうか?

答えは「おおいにあり」です。

玄関は、買い物などで多くの荷物を持って出入りすることも多く、小さな動作で開閉できる引き戸とはとても相性が良いです。ベビーカーや車いすの出入りも楽々できます。

 引き戸はドアクローザー(油圧とばねでドアがゆっくり閉まるようにする器具)が付けられないので、勢い良く開閉してしまった場合危険なのでは、と危惧されるかもしれません。しかし引き戸にもそれに相当するソフトクローズ機能が付いたものがあり、玄関用に限らず最近の製品のほとんどに搭載されていますので安心です。

 ただし、マンションやアパートの場合は、基本的に玄関ドアの交換ができませんのでご注意ください。玄関ドアの廊下側は「共用部分」のため、例え分譲マンションでも、居住者によって変更することができません。建物全体の見た目にかかわるからです。

まとめ

ご紹介したソフトクローズの機能をはじめ、引き戸は進化を続けています。うるさくて使いにくい引き戸、というイメージはすでに過去のものです。リフォームでドアから引き戸に付け替えるのも、コストや工期が軽減します。

とはいえ、すべての扉は引き戸に変えていい、というものでもありません。特にリフォームの場合は、その部屋それぞれの用途や内装、動線などを考え、それらがどう変わるのかなどをきちんと踏まえて検討しましょう。