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インテリアコーディネーターが考える「ダイニングキッチン」と「広さ」の関係

インテリアコーディネーターが考える「ダイニングキッチン」と「広さ」の関係

 特にリノベーションを考えるとき、リビングなどを広く取りたいがために、ダイニングとキッチンを省スペース化したくなるものです。その際の強い味方がダイニングキッチンです。作って食べて片づける、を一部屋で済ませることで、部屋数と床面積を節約できます。

といっても一番忙しい空間もまた、キッチンです。手狭で作業効率が悪いと、本当にストレスになります。

 そこで今回は、ダイニングキッチンに必要な「広さ」について、「動線」を基準に考えてみたいと思います。

ダイニングキッチンの広さを決める「動線」について

インテリアコーディネーターが考える「ダイニングキッチン」と「広さ」の関係

ダイニングキッチンとは、言うまでもなく「ダイニング」+「キッチン」のまとまった空間のことです。本来用途の違う二部屋をひとつにまとめたのですから、そこには当然理由があります。

ダイニングは食事をする部屋で、キッチンは食事を作るところです。それをつなげる理由と言えば、「調理から配膳、食事、片づけまでの一連の流れをスムーズにする」ことにつきます。いちいちキッチンのドアを開けて、料理を持って廊下を渡り、ダイニングのドアを開けて…とやるのは大変です。

 キッチンに限らず、人はどこかを通るとき、無意識に最適なルートを選びます。わかっていてわざわざ遠回りを選ぶことは、何か理由がない限りしません。

この「移動」において通る自然な道筋、これを「動線」と呼びます。

ダイニングキッチンにおける「移動」とは、配膳や片づけはもちろん、料理を作る際にもシンクやコンロ、冷蔵庫、食器棚と細かく行き来する必要があります。それらをいかにスムーズにできるかが、そのダイニングキッチンの快適さを決めると言っても過言ではないでしょう。

理想は、一歩も動かずにすべての作業ができることですが、四方すべてを調理器具と設備に囲まれていたとしても、充分な作業スペースや収納スペースを確保しようとしたら、それは不可能です。できるだけ無駄な移動を省きつつ、充分な空間を確保しなければなりません。

冷蔵庫、シンク、調理台、そしてコンロを結ぶ動線をできるだけ短くすることが大事です。

例えば、あなたが右利きなら、体を左回転させる(右手を前に出す)方が自然な動きになるため、上記が反時計回りになるように配置すると、比較的効率のいいキッチンになります。

普段の料理風景を想像して、理想的な配置を考えましょう。まずはそこからです。

ダイニングキッチンの理想的な「広さ」

インテリアコーディネーターが考える「ダイニングキッチン」と「広さ」の関係

ダイニングキッチンの理想的な「広さ」はどれくらいでしょう。

まず「ダイニング」部分を考えます。なぜなら、ダイニングは使い方がはっきりしている上、どのご家庭でもそれほど差はないからです。ダイニングに置くテーブルの大きさとイスの数、つまり普段食事をする最大人数から考えることができます。

テーブルの大きさは、幅が「(横に並ぶ人数)×80cm」以上、奥行きが120cm以上くらいを目安にするといいでしょう。向かい合って座るのでなければ奥行きは80cmもあれば充分です。囲むように座る場合は、短い方の辺に座る人のために幅を+60cmするといいでしょう。

イスの後ろが誰も通らない壁ならテーブルと壁の間は80cm以上、誰かが通るなら120cm以上空けておくのが通例です。

それらの条件を満たせる空間を、ダイニング側に確保しましょう。

残りはキッチンです。

といっても、あまり広いと動線が無駄に伸びて作業の効率が落ちます。先にも書いた通り、理想は一歩も動かずに作業を完結できることなのですから、できるだけ動線を短く、かつ快適な作業ができる空間を確保できるように計画しましょう。

これにはキッチンのタイプも影響してきます。すべてが横一列になっているタイプなのか、周囲を囲うように配置するタイプなのか、何人で使うのかなんかも影響します。そこは次項で解説しましょう。

「使い方」で決まるダイニングキッチンのタイプと広さ

インテリアコーディネーターが考える「ダイニングキッチン」と「広さ」の関係

そもそもダイニングキッチンにあまり広い面積を取れない場合は、キッチンは横一列になったタイプが最適です。作業するすぐ後ろにダイニングテーブルが来るため、食事が始まるまでは、ダイニングテーブルも作業台のひとつとして使うことができ、効率的です。
 
基本的な配置は向かって右から冷蔵庫、シンク、調理台、コンロが基本です(右利きの場合)。レンジや炊飯器など、普段使う調理家電も考慮し、作業の流れから使いやすい順番に配置しましょう。食器棚などの開閉スペースは、しっかり取りましょう。特に下段の開きなど、しゃがんで作業しなければならない場所は、充分なスペースが必要です。(このあたりはどのタイプでも共通です)。
 
広い、または、やや長細い感じの部屋ならアイランドキッチンやペニンシュラキッチンのように、コンロとシンクを前後に分けたキッチンが選択肢に入ります。コンロをダイニング側に向ければ作った料理をそのままダイニングに置けますし、シンクを向けるなら使い終わった食器を片づける際に便利です。いずれの場合も、水跳ねや油跳ねを防止するスクリーンを立てることになるので、テーブルの真正面よりは少しずらし、カウンタースペースを取るといいでしょう。
 
また、料理や片づけをする人数によっても、キッチンのスペースの取り方は変わってきます。ひとりで作業する場合、移動用のスペースは、横長のキッチンなら幅60cm以上、できれば80cm以上確保したいですね。アイランドキッチンのようなタイプならさらに20cm程度余裕を持たせましょう。「回る」というのは意外にスペースが必要です。食器棚などの開きが引き戸でなく開き戸なら、その開閉スペースも忘れないように配置しましょう。
 
家族や友人となど複数人で料理をすることが多いなら、さらに移動用のスペースを広く取りましょう。カウンターに向かっている人の後ろを通るために、最低でも90cm、できれば100cm以上を確保しましょう。包丁や火を扱っている人にぶつかると大変危険です。
 
料理はひとりだけれど、家族がよく冷蔵庫にアクセスする、というご家庭も多いでしょう。その場合、ダイニングと冷蔵庫をつなぐ動線上に、他のキッチンの要素が重ならないように配置すると、家族に煩わされずに作業しやすくなります。つまり冷蔵庫は、キッチンの端、ダイニングに向けて開くように設置するとよいです。

まとめ

ダイニングキッチンの広さは、家族構成やキッチンの使い方によってまちまちで、理想の広さ、は一概には言えません。

今回挙げた数字の基準もあくまで筆者の経験から来る平均的な値で、使う人それぞれによって、微妙に異なってきます。

特にキッチンは、ショウルームなどで実際に似たようなキッチンに立ってみて、幅や高さを測ったり店員さんに相談したりといった、あなた自身の感覚が一番重要で、確かな基準になります。是非、一度と言わず納得できるまで、ショウルームや販売店などで実物に触れ、そこに立ってみてください。

本稿があなたの素敵な生活の助けになれば、幸いです。