今回、HAGSからご紹介するアイテムは、アイアン製アートパネル「ウォールデコ」です。写真や好きなものを飾れるのはもちろん、パネル自体のデザイン性も高く、壁に付けるだけで壁だけだったお部屋がアートな空間になるアイテムです。
そこで今回は、そんな「ウォールデコ」の魅力や開発ストーリーについて杉山製作所の中村さんにお伺いしました。
※ウォールデコはHAGS商品名です。杉山製作所では「Fe Wall Deco(エフイー ウォールデコ)」となります。
暮らしを豊かにするモノづくり
創業以来、アイアンの加工・溶接を専門に行ってきた杉山製作所。現在は建材・家具から、店舗什器・飲食店家具と幅広く製造していますが、前身は自動車部品・列車車両部品を製造していました。
「鉄で生活を豊かにしたい」という思いで、長年にわたり培ってきた技術力と設備を活かし、これまでにないアイアン製品を生み出し続けています。「誇りを持てるモノづくり、人々の暮らしの中で生きるモノづくり」という経営方針のもと、人々の生活を豊かにするモノづくりに挑戦し続けている企業です。
「MADE IN JAPAN」
日本では、アイアンを扱うメーカーは少なく、多くは個人作家の作品か、輸入製品というのが現状だそうです。
そんな中、杉山製作所では「日本の技術の素晴らしさ」を誇り、「MADE IN JAPAN」にこだわって、仕入れから溶接までの全工程を国内で行っているということです。全てを杉山製作所内で作業するのではなく、各工程にあわせた専門の業者と連携して製造にあたっているそう。その全てが国内工場となります。
日本には優れた技術が知られないまま存在しており、それを知ってほしいという想いもあります。その技術力が形になったのが、杉山製作所の製品ということです。
例えば、ウォールデコの製造工程には、レーザーカットによる切断加工がありますが、これは地元業者に依頼しています。杉山製作所の本拠地・岐阜県関市は、鎌倉時代から700年以上の歴史がある刃物の産地。厚い鉄板を瞬間的に切断するのは、受け継がれてきた技術力によるものとも。
ウォールデコをはじめ、杉山製作所の製品は、岐阜県関市や関わる全ての技術力の上に成り立っているそうです。
新たなる挑戦は、女性デザイナーとのコラボレーション
ウォールデコを設計したのは、プロダクトデザイナー・柴田文江氏。キッチン用品やベビー用品等の日用雑貨から、エレクトロニクス商品・医療機器、カプセルホテルなど幅広いジャンルを手がけ、数々のヒット商品を生み出してきているそう。
ウォールデコは、女性デザイナーとのコラボレーションを思い描いていた杉山製作所の想いが実現したアイテムでもあります。
アイアンの重さを払拭し、軽やかさを実現した「ムク鉄」
ウォールデコの魅力は、なんといっても軽やかで優美なデザイン。アイアンの持つ重たいイメージから離れ、「もっとアイアンを自由にしたい」という想いが込められているそうです。
使用しているのは、杉山製作所で「ムク鉄」と呼ばれるもの。「ムク」は木の「無垢」材からイメージして付けられたそうです。
「ムク鉄」というのは、一般的な中が空洞になっている鉄パイプとは異なる非空洞のタイプ。中身がつまっていて空洞がないことによって、繊細な「曲げ」が可能になるのです。強度があるため、細部へもこだわったデザインができるのがムク鉄の大きな特徴です。
アイアンならではの良さがもう一つ。
実は、マグネットを付けられるというのです。目から鱗のアイテムですね。
マグネットも付属しており、すぐに飾れるような気配りも魅力の一つです。
豊富なサイズと、組み合わせもできるバリエーション
ウォールデコは幾何学模様をベースに、現代的なデザインに仕上げられています。壁に飾ればモダンアートのよう。写真や絵を飾らなくても、これだけでインテリアとして楽しめますね。
デザインは全部で3種類、全て柴田氏による設計です。サイズ展開もあり、飾りたい壁に適したサイズがきっと見つかるはず。1枚でお部屋の顔になるW630mm・H952mmから、ダブル使いできるW300mm台、狭いスペースにも飾れるW160mm・H722mmなど、お部屋の広さに合わせて選ぶことができます(デザインごとにサイズバリエーションに違いあり)。
リビングはもちろん、ダイニングや寝室、廊下など、場所を選ばずに使えます。同じデザインでも、サイズによって印象が変わるので、自分の好みで自由に組み合わせられます。
基本色はサンドブラック。ブラックとは異なる微妙なニュアンスカラーは、どんなインテリアにもマッチします。フレームカラーは別色も対応可能ですが、事前の確認が必要です。
影まで楽しめる計算された設計
このフォルムの魅力は、スタイリッシュなだけではありません。もう一つの魅力は“影”。光が当たると、影が立体的に浮かび上がります。その秘密は、本体背面のピン。このピンが本体背面から突起しているので、壁から1cmほど浮くような形で固定されます。これによって、影も立体的になるというわけです。これは、柴田氏の「影も楽しんでほしい」という想いから考案されました。一つで二つの表情を楽しむことができる、計算し尽くされた設計なのです。
より立体的に見せたいなら、フィッティングセットで立体感をプラス
背面のビスが突起していることによって壁から浮いたように見えますが、より立体感を出したいならオプションのフィッティングセット(ビス・ビス止め金具)がオススメです。
フィッティングセットのビス止め金具を壁に取り付け、ここに本体背面のピンを差し込むと、さらに壁から離れて浮いたように見えます。このビス止め金具が茶筒のような細長い形状になっているため、本体の背面ピンを差し込むと、より立体感が出るという仕組み。こちらのフィッティングセットは下地が入った壁でないと取り付けられないので、事前に設置する壁の確認が必要です。
荷重にも配慮し、軽量化を実現!テグスでも耐えられる重さ
アイアンとなると重さが気になるところ。しかし、ウォールデコは、サイズW630×D15×H952mmで重さは4kg程と、壁に掛けても十分耐えられる重さです。付属品の壁掛けフックとテグスで簡単に掛けられます。壁掛けフックはプラスターボードに打ち込めるタイプなので、壁に下地がなくても飾ることができます。
「せっかくのオシャレなデザインでも、壁掛けフックやテグスだとそちらが目立つのでは…?」とお伺いしたところ、中村さんご自身も愛用中とのことで、実際はウォールデコ本体の華やかさに目が行くので、フックの存在は気にならないのだそう。せっかくのデザインや景観の損ねることはないようです。
苦労したこと。「10年早く発売したこと」
細部までこだわったウォールデコですが、開発するにあたり苦労したことはあったのでしょうか。
「開発までよりも、発売当初に苦労しました」と中村さん。ウォールデコを発売したのは2011年。今でこそ壁をデコレーションすることは、インテリアの定番の一つになっていますが、当時はまだ「壁に飾る=絵画」というのが一般的な概念だったそう。そのためウォールデコを持ってインテリアショップを回ると、「10年先の物を売っている」と言われたほど。
絵画以外に自分の好きなものを飾るという概念が浸透していなかったため、発売当初はなかなか店舗側に受け入れられずに苦戦したと言います。
しかし、最初は大変だったものの、徐々に受け入れられるようになりました。ウォールデコ自体のデザイン性の高さから、絵画のように飾る方が増えてきたそうです。価格面でも、絵画を買うよりもリーズナブルであることも後押しに。また、簡単に設置できるのも選ばれる理由だったのではないかと振り返ります。
そしてさらに人気ドラマで、メインキャストの部屋の小道具としても採用されたそう。部屋に飾られたウォールデコを見て、問い合わせが一気に増えたと言います。ドラマは終わって数年経ちますが、今もなお「ドラマで見た」という問い合わせが続いているとのことです。
楽しみ方は十人十色、それがウォールデコの最たる魅力
お部屋に彩りを添えて生活を豊かに、楽しんでほしいという想いが込められているウォールデコ。絵画のように飾ったり、写真やお気に入りのものを掛けたりと、自分なりのアレンジでウォールデコレーションを楽しめるのが魅力です。これまでのアイアンのイメージを覆した軽やかなデザインは、アイアンの可能性や魅力に気づくきっかけになるアイテムと言えるでしょう。
まとめ
アイアンには程遠い“軽やか”というイメージを表現したウォールデコ。その裏には、アイアンの可能性を広げる杉山製作所の「アイアンのプロ」としての柔軟な開発精神と、「鉄で生活を豊かにしたい」という生活への想いが込められています。
“重い”“無骨“といったアイアンのこれまでのイメージを脱却したウォールデコは、アイアン製品の中でも異色の存在です。
アートとして、鉄として、飾りを楽しみ影を楽しむ。自分流の楽しみ方を見つけてみませんか?