最近の住宅においては和室がない家も多く、床の間を見かけることも少なくなってきました。床の間があっても、持て余している方もいるのではないでしょうか。
ここでは、床の間をつくる際の注意点やメリットとデメリットについても紹介します。
床の間とは何か
床の間とは、日本の建築において畳の部屋にある座敷飾りのひとつです。正式名称は床(とこ)です。床を少し高くしており、掛け軸や絵画を掛けたり、花や置物、骨董品や美術品などを飾ったりします。床の間には、とこしえ(永久)という意味もあり、家の繁栄を象徴するものでもあります。
床の間は神聖な場所とされてきました。そのため、床の間の上に座ったり、上がったりするのはマナー違反です。
床の間の前が上座となり、床の間を背にして座るのは年上の人や上司など目上の人が望ましいとされています。
床の間をつくる際の注意点
床の間をつくる際、床の間の向きや畳の敷き方などについていくつかの注意点があります。詳しくみていきましょう。
床の間の向き
床の間の向きにも、良い向きと悪い向きがあります。良い向きは「北を背にした南向き」「西を背にした東向き」「北西を背にした東南向き」、悪い向きは「北向き」「北西向き」「西向き」「北東と南西の鬼門向き」です。鬼門とは、邪気がの出入りする方角のことです。
これらは、風水や気学などに関係のある家相学の知識に基づいています。床の間をつくる際には参考にしてみてください。
畳の敷き方
畳の敷き方には、祝儀敷きと不祝儀敷きがあります。祝儀敷きは4枚の畳の角が1か所に集まらないように敷く方法で、一般の住宅は祝儀敷きです。
不祝儀敷きとは畳の角が1か所に集まり、集まった角の形が十字の形になるように畳を並べる敷き方。お寺や旅館の大広間においてはこのような敷き方をします。
さらに決まりがあり、床の間の前に敷く畳は、畳の縁を床の間に対して直角にせず、床の間と平行の向きにします。これは床の間の前が上座となるため、そこに座る人が畳の縁に座らないようにするためです。また、床の間に飾られた掛け軸や花を観賞した人が後ろに下がる際、畳の目の方向が合っていないと膝をすって後ずさりができません。これらの理由から、床の間の前の畳は敷く向きが決まっているのです。
出入り口の前の畳は、横向きに敷きます。そうすることによって、出入りの際に畳の目と同じ方向に足を運ぶことができ、畳も傷みづらくなります。和室に床の間をつくる際は、床の間や出入り口の前の畳の向きにも気をつけましょう。
最近は見る機会の少なくなった床の間ですが、つくるとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
床の間は何かを飾るためにつくられた空間であるため、絵画や花などが飾りやすくなります。美術品などを所有していて飾る場所がない場合でも、床の間があればきれいに飾ることができます。
畳の上に重たい家具などを置くとへこみなどで畳を傷めてしまうため、基本的には畳の上に家具は置きません。そのため、和室は殺風景になることが多いです。そのような場合でも、床の間に何か飾ることで和室が華やかになり部屋にメリハリがでます。床の間のある部屋は、来客をもてなすのにぴったりです。
床の間があると部屋に奥行きがでるため、部屋が広く見えます。圧迫感がなくなるので、よりリラックスできるでしょう。
床の間がある部屋ならではの雰囲気や美しさを味わうこともできます。視線を集める場所をアイスポットといいますが、これを活用すると人は目のやりどころに困らないため、部屋にいるときのストレスが軽減する効果があるといわれています。床の間はこの役割を果たすのです。
デメリット
床の間は飾るための空間であるため、飾るほどの物がなければ持て余してしまいます。その結果、何を置いていいか分からず無駄なスペースとなる可能性があります。ですが、床の間に飾るのは美術品や骨董品などの高価な物である必要はありません。好きな花や手作りの器などでもいいですし、和室だからといって和風の物にこだわらなくてもいいのです。
思い切って、押入れやクローゼットにリフォームするのもいいでしょう。
まとめ
最近はあまり家庭で見られなくなった床の間ですが、魅力もたくさんあります。
自宅に床の間があって使い方に困っている場合はもちろん、これから床の間をつくる際はしっかり活用して和室を華やかに、そしてリラックスできる空間にしてみてはいかがでしょうか。