こんにちは。現場監督ライターのKumaです。今回はセラミックタイルについてご紹介します。
タイルは、磁器質、せっ器質、陶器質と分けることができるのですが、これらのタイルを総称したものがセラミックタイルです。現在では、木材、クロス、塗装、石材などと並ぶ、一般的な住まいの仕上げ材の一つです。
もともと壁用、床用タイルは大理石などの美しい石材でできていました。技術の進歩により、石材に変わり、入手しやすい施釉セラミックタイルが作られるようになり、広く普及しました。
セラミックタイルは色・テクスチャー・模様を比較的自由に作ることができます。天然石にはない新しいデザインはもちろん、天然石をリアルに再現したデザインまで、数多くの種類が広く市販されています。
今回は色・テクスチャー・模様を様々に表現できるセラミックタイルをご紹介します。
セラミックタイルの特徴
いま流通している多くのタイルは、セラミックタイルです。製品としての統一規格が日本工業規格で決められています(セラミックタイル JIS A5209 2014)。
セラミックタイルは粘土、シリカ、融剤、顔料などを原材料として作られています。釉薬を施して高温で焼成するため、表面は不透明なガラス質のエナメル状になっています。釉薬が掛かっていない裏面は多孔質で接着性に優れています。
セラミックタイルの使いどころ
今、セラミックタイルの利用は多岐にわたります。現在の住まいに使われるタイルの大半はセラミックタイルです。少し前までは天然石でしか作れなかった大判の石材タイルや、超大型タイルもセラミックタイルに置き換わりつつあります。
住まいの中ではキッチンや浴室などの水回りの空間に使われる小口タイルが一般的です。様々な色・テクスチャー・模様の製品が作られ、膨大な候補の中からデザイン性や機能性に優れたタイルを選ぶことができます。
近年、大判・薄型のセラミックタイルが幅広く使われ始めました。少し前まで、大判の製品は天然石を原材料とすることが必須でした。それがセラミックタイルで大判製品の製造が可能となり、置き換わりつつあります。住まいの中でも、床用・壁用の大判製品はセラミックタイルが使われています。
・参考:「大判化」「薄型化」が進み用途の広がるセラミックタイル Part1 ,ABC商会(https://www.abc-t.co.jp/columns/201708ceramic01.html)
規格による分類
セラミックタイルの規格は、日本工業規格のJIS A5209:2014で決められています。この規格の中に、セラミックタイルに関する製品の形や寸法の定め方、製品の試験方法が定められています。
吸水率によって、I類、II類、III類と分けられているのですが、これは旧JIS規格での、磁器質タイル、せっ器質タイル、陶器質タイルという分類にほぼ対応しています。旧JIS規格での名称は現在のJIS規格には示されていませんが、一般に分かりやすく、今でも使われています。
・参考:JIS セラミックタイル(JIS A 5209:2014), JSA GROUP Webdesk (https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_a_05209_000_000_2014_j_ed10_ch.pdf)
・参考:素材の品質 JIS A 5209 陶磁器質タイルの改正, LIXIL
セラミックタイルの実例とメンテナンス
セラミックタイルは住まいの壁や床、お風呂場やキッチン、屋外まで幅広く使われています。
セラミックタイルの実例
セラミックタイルの特徴がよく分かる製品かを見ていきましょう。
○ブせっ器質タイル ドゥーエブリック(れんが調)[小口/二丁掛] / HAGS
アンティークレンガ調のセラミックタイルです。セラミックタイルならではの再現性の高さです。
○磁器質タイル ロッキング / HAGS
こちらは天然石を再現したタイルです。色や模様はインクジェット技術による「印刷」です。
○グラディオス / INAX
技術進歩により可能になった、高さ3m・幅1.5m、厚さ6.0mmの超大判壁用タイルです。主に大型建築物に使われます。一般的な住まいの天井高さが2.4mなのを考えると、その大きさがよくわかりますね。
セラミックタイルのメンテナンス
一般的にセラミックタイルは表面がガラス質に覆われています。水をほとんど吸わず、硬くて汚れを寄せ付けません。メンテナンスがとても容易です。
普段のお手入れは、乾いた布や固く絞った雑巾で汚れを落とします。汚れがひどく落ちにくい場合は、市販の中性洗剤を水で薄めて雑巾やタワシで汚れを擦り落とします。洗剤が残らないように、水洗いをしてから十分乾燥させるのがポイントです。
タイルそのものは硬くて汚れが付きにくいものですが、目地は汚れが付きやすい場所です。目地についた汚れは早めに拭き取ります。染みこんでしまった場合はブラシと洗剤で擦り落とします。洗剤が残らないように、水洗いをしてから十分乾燥させます。
一部、無釉タイルや陶器質タイルは水を吸いやすいので扱いに注意が必要です。
環境性と廃棄物
近年は製造や流通への環境配慮、廃棄物の適正処理など、できるだけ自然にやさしく負荷をかけない製品が注目されています。
セラミックタイルの環境性
セラミックタイルの主な原料は粘土、シリカ、融剤、顔料などです。自然にあるものを主原料としています。これらを焼き固めており、形状が安定して、施工時や生活している中でも有害物質が発生することはなく安全です。カビやコケなどで生分解しません。
環境性を表す規格に「グリーン購入法適合製品」や「エコマーク」があります。いずれも製造・流通・廃棄までの製品ライフサイクルを通して環境負荷が少ないことを示す規格です。
〇グリーン購入法適合商品
「グリーン購入法」により定められた製品で、環境負荷低減に資する製品・サービスに適合したもの
・参考:グリーン購入法について, グリーン購入法.net
〇エコマーク
グリーン購入法適合製品と同等かそれ以上の製品に対して認定される。
エコマークは、様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルです。このマークを活用して、消費者のみなさんが環境を意識した商品選択を行ったり、関係企業の環境改善努力を進めていくことにより、持続可能な社会の形成をはかっていくことを目的としています。
・参考:エコマークについて,エコマーク事務局
廃棄物
セラミックタイルは、安定しているので生分解せず、毒性もない製品です。再利用やリサイクルが行われています。最終的な廃棄処分としては埋め立て処理が一般的です。
・参考:廃棄物の種類の内容とリサイクル方法 ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず,リサイクルハブ
まとめ
今回は住まいの仕上げ材のうち、セラミックタイルについてご紹介しました。
セラミックタイルは粘土、シリカ、融剤、顔料などの原材料で作られています。色・テクスチャー・模様が自由に表現でき、幅広く普及しています。素晴らしいデザインのものが多く生産されています。天然石にはない新しいデザインや、天然石を再現したデザインまで選ぶことができます。
参考文献
デニス・ジェフリーズ,フロアマテリアル,産調出版株式会社