モルタルは水+セメント+細骨材(砂など)でできており、その配合率によって同じモルタルでも物性が変わってきます。モルタルの単位体積当たりの重さを比重量と言いますが、水・セメントの比率や、細骨材の材料によってモルタルの比重量にも幅があります。
一般に砂利などの粗骨材が含まれていないモルタルは、コンクリートよりも強度が弱いとされており、屋台骨を造るコンクリートに対して、表面を仕上げるために使われることが一般的です。
この記事では、モルタルを用いた作業に影響する、モルタルの比重量についてご紹介します。
モルタルの比重量とは?
比重量とは「物質における単位体積当たりの重量」を言い、「単位容積質量」や「単位体積重量」とも呼ばれています。主に建築業界では「単位容積質量」、土木業界では「単位体積重量」と呼ばれることが多く、単位はそれぞれt/m3又はkN/m3が使われます。因みによく耳にする「比重」は、「物質の密度と水(4℃)の密度の比」のことを指し、比重量とは別物で単位がありません。
モルタルはセメントに水と細骨材を加えてできるものですから、モルタルの比重量はこれら素材の割合に依存します。石や砂利といった粗骨材が含まれていない分、モルタルの比重量はコンクリートよりも小さい傾向にあります。これはコンクリートよりも軽いことを意味します。比重量の大きさでは、モルタル、無筋コンクリート、鉄筋コンクリートの順に大きくなります。
比重量が大きいほど、単位体積当たりの重量が重くなるので、一般的に強度が増加します。日本は地震大国ですから、建築構造物の屋台骨である構造躯体にはできる限り頑丈な材料を用いて耐震力を強化する必要があります。そのため、構造躯体には鉄筋コンクリートが主として用いられ、モルタルはほとんど使われてきませんでした。
しかし、近年では都心部に見られるようなタワーマンションへの需要により、建築物の高層化が目立ってきており、これに対応するためのコンクリートの高強度化とともに軽量化も求められています。これまで表面仕上げをメインに用いられてきたモルタルについても、素材の配合加減により、コンクリートに負けない強度を持つ構造躯体用モルタルの研究が進められているところです。
モルタルの比重量を左右する水・セメント比率と細骨材の種類
水・セメントの比率や細骨材の種類によって、モルタルの比重量は大きく変わります。具体的には、水・セメント比率はモルタルの強度に影響し、細骨材はモルタルの物性を変化させます。
モルタルはコンクリートより水分比率が高い
一般的に水・セメント比率は40%が上限とされています。水・セメント比率は小さくなるほど(セメントの水分含有量が小さいほど)強度は強くなりますが、作業しづらくなる・価格が上がるといったデメリットがあります。
水分含有量が少ないほど、乾燥収縮しにくい上に水分蒸発後の空隙率も下がるため、高い強度のコンクリートが得られます。モルタルはコンクリートよりも水分比率が高いので、乾燥収縮がコンクリートに比べて起こりやすく、その結果、クラックが生じやすくなります。モルタルを構造躯体に用いないのは、このような理由からです。
因みにモルタルの中でも、砂:セメントの比率を3:1にして、水分を大幅に除いた「バサモル」は、タイル張りの土台によく使われています。バサモルでしっかり下地を造り、その上にモルタルを塗装してタイルを張ることで、ひび割れの生じにくい構造物に仕上がります。
モルタルは粗骨材が含まれないので比重量が小さい
細骨材率の種類や含有量は、モルタルの性状に影響を及ぼします。一般的にコンクリートは比重量の大きい粗骨材の配合率を高めることで、粗骨材が核となり強度が高くなりますが、モルタルには粗骨材が含まれていないため、比重量が不足し強度を確保することは困難です。
しかし、最近ではモルタルの高い材料分離抵抗性を活かして、構造躯体用モルタルの研究開発も進んでいます。材料分離抵抗とは、混ぜ合わせた材料の分離しづらさを表す言葉で、施工中に材料が分離してしまうと強度に欠陥が生じる可能性があります。モルタルはコンクリートよりも混ぜ合わせた材料が分離しづらい傾向にあることが先行研究で明らかにされているため、その特性を活かした構造躯体用モルタルの研究開発が注目されているところです。
まとめ
比重量とは、物質の単位体積当たりの重さを指します。一般的にモルタルの比重量は、無筋コンクリートや鉄筋コンクリートよりも小さいとされています。これは、モルタルに粗骨材が含まれていないことや、水・セメント比率がコンクリートに比べて高いころが主な理由です。
モルタルの建築材料としての特徴が分かったところで、一度ショールームに足を運んで、モルタルとコンクリートの違いを目や感触で確かめてみるのも良いでしょう。
参考
・コンクリートメディカルセンター「コンクリートの比重(単位容積質量・単位体積重量)とは?」
・土木学会
・先端材料資源研究センター