「リノベーションはオシャレだけど高いのでは?」というイメージがありませんか?実はここ数年でリノベの内容も費用も変わってきています。その結果、予算が少なくても実現できるリノベーション事例も増えているのです。
今回ご紹介するのは単に費用が安いリノベーションではなく、「300万円台でここまでできるリノベ」から「1000万円超のこだわりリノベ」まで、コストを意識しつつ素材やグレードにこだわったリノベーションについてです。
せっかくリノベーションするなら、費用の大小はあれど、限られた予算の中でできる限り願望を叶えたいもの。この記事では、リノベの費用相場から損しないローンの組み方まで、リノベにまつわる費用のあれこれを事例とともに解説していきます。
ちょこっと解説
ちなみに「リフォーム」は、壁紙を張り替えたりトイレを交換するなど、新築時の状態に「戻す」場面で使われることが多く、「リノベーション」は、「刷新して新たな付加価値を生み出す」場面で使われることが多い言葉です。
ここでは「リフォーム」ではなく、ライフスタイルに合わせてアップスタイルした「リノベーション」について取り上げていきます。
関連記事:リノベーションとは?リフォームとの違いや費用も徹底解説!
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もくじ
1.リノベーションとコストの関係
リノベーションの中には、間取りを大きく変えたとしても、素材にはこだわらないというケースがあります。しかし、せっかくリノベーションするなら床材を無垢材にする、オンリーワンの造作キッチンにするなど、こだわるところはこだわりたいですよね。
一方で、無理のない予算の範囲内で考えることも大切。素材にもコストバランスにもこだわったリノベーションこそ、真の「こだわりリノベーション」と言えるのです。費用を予算内に収めるにあたって、単なるCD(コストダウン)ではなく、VE(バリューエンジニアリング)という手法を用いて体形的にコストを整えるのがポイント。上手くVEを効かせることにより、予算の範囲で叶えたいことを最大限反映した心的満足度の高いリノベーションを実現できるのです。
2.リノベーションの費用相場って?
それでは、実際リノベーションにはどれくらいの費用がかかるのか見ていきましょう。コストバランスを意識しつつ、素材にもこだわったリノベーションであれば300〜1300万円程度が一般的な相場です。
費用相場に幅があることからもわかる通り、リノベーションの内容によってコストは大きく変わってきます。費用に関わる大きな要因としては、次のようなポイントが挙げられます。
- フルリノベーションなのか、既存残しリノベーションなのか
- リノベーションの対象面積
- リノベーションする箇所
- リノベーションに使う素材や設備のグレード
特に、4つ目に挙げた素材や設備のグレードは、案件ごとに差が出やすいポイント。例えば、床に用いる無垢材にもさまざまな種類があり、樹種・産地・節の有無・色やグレード・塗装の種類などによって、費用感も大きく異なってきます。部屋全面に張るとなれば、ますます費用に影響するでしょう。
また、壁や天井を珪藻土や塗装にしたり、ドアなどの建具にデザイン性のあるものをあしらったりすれば当然コストは高くなります。壁・天井・建具はこだわらずにビニルクロスや既製品を用いることでコストダウンが可能ですが、こだわりたい人にとっては物足りないかもしれません。
リノベーションの内容を検討する上では、どこにこだわるのか、どうやってコストを調整するのかという視点を持つことが重要です。
3.施工事例で見る費用の目安
続いては、実際のリノベーション施工事例から費用の目安を解説していきましょう。
Case1:フルリノベ(全てを解体し、ゼロからデザインする):1350万円(税・設計料込)
工事費:1350万円(税・設計料込)
1つ目にご紹介するのは、築38年・専有面積81.86平米の中古マンションをフルリノベーションした事例です。フルリノベーションとは、床や天井など一度全てを解体した上で、間取りをゼロから作り直すリノベーションのこと。手を加えなければならない箇所が多い分コストも高くなりますが、自由度が高いのでこだわりを存分に発揮できるのがポイントです。
8畳の和室を取り払って誕生した大空間のリビングダイニング、玄関近くの個室を丸々使った土間収納など、大胆な間取り変更ができるのもフルリノベーションならでは。フローリングにナラの無垢材を使用したり、料理好きのご主人希望のオールステンレスキッチンを採用したりと、素材や設備にも最大限こだわっています。
お風呂はマンションでは珍しいの在来工法、置き型のバスタブはなかなか見ごたえのあるアイテムです。80平米超の広さでここまでやって1350万円という、夫婦のこだわりを詰め込むことで、毎日の暮らしが楽しくなるようなリノベーションを実現できました。
Case2:一部既存残しリノベ(寝室以外リノベーション)工事費:850万円(税・設計料込)
工事費:850万円(税・設計料込)
続いてご紹介するのは、寝室のみ既存の状態を残しつつ、他の場所は全てリノベーションした事例。フルリノベーションに比べると手を加える範囲が少なくなるため、コストを少し抑えることができます。
この事例には、他にもリノベーションの費用調整のヒントが隠れています。上の画像を見ると、しっかり作り込まれたオシャレなLDKという印象を受けるかもしれません。しかし、物件引き渡し時は下の画像のような状態でした。
2枚の画像を見比べてみるとわかる通り、壁付の収納やフックなどは全てご主人がDIYで作成したもの。LDKに限らず、家のいたる壁にOSBボードという下地材を使用しており、DIYをすることによって部屋が完成するという作りになっているのです。最後は自分たちで仕上げることで費用を抑えつつ、自分たちらしさを強調することができます。
一方、キッチンや洗面台のL字カウンターといった水回りに予算の多くを割いているのも特徴。「こだわるところはこだわり、DIYできる部分は自力でこしらえる」という絶妙なバランスによって、850万円の予算で理想の我が家を実現しました。
Case3:既存残しリノベ(リフォーム済物件を部分リノベ):300万円台
工事費:300万円台
ここからご紹介する2つの事例は、300万円台という少ない予算でこだわりリノベーションを実現した事例です。1つ目の部屋はもともとリフォーム済だった中古物件を購入し、床・リビングの壁・天井を張り替えています。オーナーがもっともこだわったのが無垢フローリング。以前は明るめのクッションフロアでしたが、無垢フローリングにすることで部屋全体にビンテージ感が生まれました。
予算の都合で大きな間取り変更は難しい中で、元からあったウォークインクローゼットの扉をオリジナルの引き戸に変更。白い壁と無垢フローリングが主体のシンプルな部屋において、シックな引き戸がいいアクセントになっています。
このようにプチリノベは手を加える箇所が限られている分、こだわりたい箇所にとことんこだわれるのがメリット。予算に余裕を持っておくことで、家具にこだわることができるのも嬉しいところです。生活空間は家具を置いて初めて完成するもの。プチリノベによって「家具が主役の家づくり」を実現する、というのも有効な考え方と言えるでしょう。
Case4:既存残しリノベ(LDKだけのポイントリノベ):300万円台
工事費:300万円台
こちらの部屋もリフォーム済物件を一部リノベした事例です。キッチンの前にあった5.6畳の洋室をなくしてリビングダイニングと一体化、狭かったLDKが広く開放的な空間に生まれ変わりました。この物件のように、生活の中心となるLDKのみをリノベするという事例も増えています。
リノベーションするにあたって、グリーンをテーマカラーに決定。天井やキッチンの壁タイルなど、要所要所にグリーンを配することで部屋全体に統一感が生まれています。構造上どうしても取り除くことのできなかった梁も、木板を貼った化粧梁にすることにより、部屋を特徴づけるアクセントに仕上がりました。
プチリノベはリノベする箇所を絞っているため、狭く濃くこだわることができるのがいいところです。例えば、ご主人が仕事で使う大量の本をまとめて収納できる造作本棚。化粧梁・無垢床と素材や色合いを統一した存在感抜群の本棚は、プチリノベの良さが詰まった存在と言えるでしょう。
リノベーションは費用をかける分だけ、こだわりの幅が広がるというのは事実です。一方で、コストのかけ方を工夫すれば、低予算でも十分満足度の高いリノベーションが実現できるということもおわかりいただけたのではないでしょうか。
4.費用と素材選びの関係|フルオーダーとパッケージプラン
リノベーションをどの範囲まで行うかによってコストが異なってくるということをお伝えしましたが、フルリノベーションの中にも「フルオーダー」「パッケージプラン」の2種類があります。こだわりの内容と予算のバランスによって、どちらがいいかを選ぶといいでしょう。
フルオーダーとは?
フルオーダーとはその名の通り、間取りだけでなく内装、設備の仕様に至るまで一から決めていくリノベーションのこと。素材も全てオーダーメイドなので、住まいにとことんこだわりたいという人におすすめです。
パッケージプランとは?
対するパッケージプランは「セミオーダー」とも呼ばれ、間取りは自由にデザインしつつ、水回りの設備や素材などはプロが厳選したものの中から選ぶ、カスタムオーダーリノベーションのこと。プロが選び抜いたものを使用するので、グレード感はフルオーダーに引けをとりません。素材から何から完全に自由選択だと決めるのが難しい、という人におすすめの方法です。
費用はこだわりとのバランスで調整
フルオーダーとパッケージプランを比較したとき、どちらの方がコストを抑えられるのか気になる人も多いのではないでしょうか。結論から言うと、コストの高い低いは一概に言えません。
フルオーダーのほうが費用がかかると思われがちですが、実際には依頼するリノベーション会社にしっかりと予算を伝えておけば、それほど費用が大きく膨らむことはないでしょう。
パッケージプランは最初から費用が見えやすいというメリットはあるものの、オプションを増やせば当然コストは割高になります。つまり、フルオーダーでもパッケージプランでも、こだわりと予算のバランスによって費用の大小が決まるということに変わりはないのです。
5.費用のかかり方を知っておこう
リノベーションのコストを検討するにあたっては、何に費用がかかるのかという点を把握しておくことが大切。費用のかかり方を知っておくことで、コスト調整時に自分自身でも検討することができます。ここでは5つの側面から費用のかかり方を解説していきましょう。
(1)広さ
リノベーション費用の基本となるのが、リノベーションを施工する面積の広さ。大まかには平米単価×広さで予算感をつかむことができます。そのため単身世帯向けの1LDKの部屋をリノベーションするより、ファミリー向けの3LDK物件をリノベーションするほうが一般的に費用は高くなります。逆に捉えれば、リノベーションする範囲を絞ることでコストを抑えられるとも言えますね。
(2)間取り
リノベーション費用は間取りによっても変動します。部屋数が多ければ壁の面積や扉の数が増えることになり、全体的にコストがアップ。部屋数の少ないシンプルな間取りであれば、余計なコストを抑えることができます。また、間取りの大幅な変更を伴うリノベーションは工事費が高くなりやすいので要注意です。
(3)設備
広さや間取りは部屋の構造に関わる部分ですが、水回りなどの設備にかかるコストも、リノベーション費用として見込んでおく必要があります。水回りはグレードによって費用が大きく変動するため、実際に使うシーンを想像しながら優先度をつけて選ぶのがおすすめです。
(4)仕上げ
床や壁の仕上げ方法も、リノベーション費用の中で変動が大きい部分。床材であれば、複合フローリングよりも無垢フローリングのほうが費用は高くなります。壁の仕上げで言えば、壁紙クロス仕上げよりも塗装仕上げのほうが高くなるといった具合。一方で、床や壁の仕上げは部屋の雰囲気を左右する箇所なので、コストとこだわりのバランスが特に重要と言えるでしょう。
(5)地域
実はリノベーション費用は地域によっても差があります。これは、人件費や材料費、工賃といったコストの単価が地域によって異なるため。都市部だけでなく、職人の少ない地方でコストが割高になるケースもあるので、事前にエリアの費用相場を把握しておくといいでしょう。
6.予算オーバーの時のVE
当初決めていた予算があっても、こだわりを詰め込み始めると予算オーバーになってしまうというのはよくあること。予算内に収めるためにこだわりを諦めるのではなく、別の方法で実現しながら費用を削減する手法をVE(Value Engineering)と言います。
CD(コストダウン)ではなくVEに強い会社を選ぼう
建築や不動産の世界では、費用を削減する際に「CD(コストダウン)」「VE」という2つの手法がよく用いられます。
「CD」とは、費用が高い部分を取りやめたり、より安いものにグレードダウンしたりすることによって全体の費用を削減する方法。CDをすれば直接的にコストを削減できますが、何かこだわりを諦めなければならないということになります。
対して「VE」とは、実現したいことへアプローチする手段を変えることによって、結果的に費用を小さくする方法のこと。例えば、海外製品を直輸入することでマージンを抑える、既製品だと高くなりがちな特殊形状のキッチンを造作で設置する、といった具合です。
いずれの例も当初のこだわりやグレード感は維持しつつ、コストのみを抑えられることになりますよね。リノベーションを依頼する際、VEに強い会社を選ぶことにより、予算内でこだわりを実現できる可能性が高まります。
「既存残し」「あとまわし」できることがリノベーションの強みでもある
リノベーションにおいて予算オーバーしておいた時、意識すべきことが1つあります。それは、リノベーションでは「既存残し」や「あとまわし」ができるということです。
新築の場合、100%まで家を作り上げなければそもそも住むことができません。対してリノベーションの場合、既存の家がある状態からスタートするので、全てをやり切らなくてもひとまず住むことができるのです。
先ほど見た通り、リノベーション費用は面積にも依存するため、工事面積や箇所を絞ることでコストを抑えることが可能。最初のリノベーションでは、後からでは変えられない部分のみを施工しておき、やがて予算が組める状態になってから仕上げていくということもできるのです。この手法は、リノベの先輩たちもよく使っています。
ただし、ローンについては注意が必要。最初に工事をまとめて行えば、物件購入と合わせて金利が比較的低い住宅ローンに組み込める可能性もありますが、後から別工事を行おうとすると住宅ローンではなく、金利が比較的高いリフォームローンを組まなければならない可能性があるのです。工事を段階的に行うことは、ローン面でデメリットもあるという点は覚えておきましょう。
7.リノベーションならではのローンって?
リノベーションでローンを組むのであれば、ワンストップリノベーションがおすすめです。ここでは、リノベーションならではのローンを解説した上で、ワンストップリノベーションについてご紹介していきます。
比較的金利が高い「リノベーションローン」
リノベーションで使えるローンは主に「リノベーションローン」と住宅ローンです。1つ目の「リノベーションローン」は、リノベーション専用の金融商品です。
リノベーションローンは無担保で借りられることが多く、借入できる金額は少なめですが借りやすいというメリットがあります。ただ、無担保なだけあって金利は比較的高く、借入期間が短め。一方の住宅ローンは住宅購入にあたって組むローンであり、比較的低金利で大きな金額を長期間借りられるという特徴があります。
通常のリノベーションでは、中古物件を不動産会社から購入、リノベーションは専門会社と契約といったように、別々の会社に業務を依頼することになります。結果、中古物件購入で住宅ローンを組み、リノベーションにはリノベーションローンを充当するという二重ローンになってしまうため、毎月の返済金額が膨らんでしまうのです。
ワンポイント「好きな間取りができない問題」
先に中古物件を購入しておいて、別の会社でリノベーションのみ行うとなった時、構造上外せない壁があるといった事情で、希望通りの間取り変更が叶わないことがあります。物件購入とリノベーションを別会社に依頼する場合には注意が必要です。
ワンストップリノベーションならローンもおまとめ
ローンを一本化したいと考えているなら、中古物件購入+リノベーションを一社完結型で行う「ワンストップリノベーション」がおすすめ。ワンストップリノベーションであれば、住宅購入費用とリノベーション費用を1つの住宅ローンにまとめることができます。
比較的金利が低く長期間にわたり借りられる住宅ローンに一本化することにより、同じ予算をかけたとしても、月々の返済額を小さくできる可能性があるのです。このように、ローンを節約することができるのが「ワンストップリノベーション」の魅力です。
8.費用よりも怖い保証問題
ここまでリノベーションにまつわる費用について見てきましたが、住み始めてからのアフター保証も大切です。
中古物件をベースにしているリノベーションは、住み始めてから問題が見つかることも。後から不良が見つかるたびに費用を支払っていたのでは、どれだけ工事費を抑えたとしてもトータルコストが膨らんでしまいます。
だからこそ、リノベーション会社選びの段階でアフター保証について確認しておくことが重要です。ほとんどの会社はアフター保証を行っていますが、期間や範囲、定期点検の有無は会社ごとにまちまち。リノベーション会社を検討する際には、アフター保証の有無だけでなく内容を精査しておきたいところです。
なお、リノベーション関連会社の業界団体であるリノベーション協議会では、事業主のアフターサービスをバックアップする名目で、構造上重要な部分に対する最低2年の保証を設けています。リノベーション協議会加盟企業に適用される制度ですので、覚えておくといいでしょう。
まとめ
リノベーションは、面積や素材など複数要素の組み合わせで費用が決まるもの。「こだわりリノベーションは費用が高い」と思い込んで、リノベーションを諦めてしまうのはもったいないことです。
リノベーション費用の内訳やかかり方を正しく理解した上で、自身がリノベーションで叶えたいこだわりの優先度や必要度を検討してみましょう。こだわりとコストのバランスを上手く調整することで、限られた予算でもこだわりリノベーションは実現できるのです。
自分一人ではなかなか考えられないという場合には、専門のリノベーション会社に一度相談してみるといいでしょう。
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