日本の伝統的な内装の一つに土壁があります。壁の表面に土を塗ることで仕上げるのですが壁紙の登場で、珍しい仕上げ法と言われるようになってしまいました。そんな土壁の中でも最高級とされているのが聚楽（じゅらく）。京都の特定の地域でしか採れない土で仕上げられており、貴重な土壁とも言えるでしょう。
そんな貴重な聚楽壁のメンテナンスには、本来ならば塗り直すべきとされます。しかし悩ましいのがコスト。ならば上から塗装をしてしまうのはいかがでしょうか。
寿楽壁（じゅらくへき）とは塗壁のバリエーションの一つ
表面に何かを塗り付けて仕上げる壁は塗壁と呼ばれますが、その材質によって土壁や砂壁、漆喰（しっくい）などのバリエーションがあります。塗壁で近年、人気が高いのが珪藻土（けいそうど）。湿気を調節してくれる機能などで注目されている珪藻土を使った塗壁は、土壁の一種に分類されます。
土壁の最高峰・寿楽壁
土壁に用いられる素材の中で最高峰が聚楽とも言われます。
豊臣秀吉が京都に建てたことで知られる「聚楽第（じゅらくだい）」跡地、現在の西陣地区で採られる土のことです。質が高いことで知られており、茶室などの内装材として珍重されてきましたが、現在では採れる量も少なくなってしまいました。聚楽を用いずに雰囲気だけを真似たものが聚楽壁と呼ばれることもありますし、京都でよく用いられた手法であることから京壁とも呼ばれたりもします。
他の土壁のバリエーション
他の土壁のバリエーションとして、滋賀県大津で採られる土を用いた「大津壁」や鉄分を含む土で仕上げた「錆壁」もあげられますが、これらも近頃ではあまり見かけなくなってしまいました。
聚楽壁のメリット
職人さんによる手塗りで全て仕上げられ、高い品格をもただよわせる聚楽壁。これ以外にもいくつかのメリットがあります。
調湿・消臭機能を持つ
聚楽壁の表面には目に見えない無数の穴が空いており、湿度が高いときには吸収し、低いときには放出する機能も持っています。同時に臭いも吸収してくれますから、聚楽壁は常に快適な空気をもたらしてくれる壁とも言われてきました。
安心・安全の素材である
聚楽壁は天然素材からできていますから、人体への影響もないと言ってよいでしょう。アレルギーなどの心配がある方でも安心して住むことができます。また聚楽壁に限らず、土壁は高い防火性能を持っていますから、安心・安全の素材として評価も高いようです。
聚楽壁を補修するには？
見た目には高い風格があり、安全・安心の素材である聚楽壁ですが、メンテナンスをおこたっていると表面にカビが発生したり、ひび割れや剥がれも出てきます。すぐにでも補修が必要になるのですが、その場合にはどのような方法があるのでしょうか。
塗り直し
聚楽や似た土で塗り直してやるのがベストです。しかし、補修した部分だけ風合いが大きく変化しますから全面に手を入れる必要があるでしょう。加えて、近年では土壁を塗ることができる職人さんが減ってしまいました。お住いの地域によっては、塗り直しを依頼すること自体が難しいかもしれません。
壁紙など他の仕上げにする
壁紙や珪藻土など他の仕上げにする方法もありますが、聚楽の上からの施工は困難とされていますので避けるべきでしょう。
壁紙なら下地を造るために、珪藻土なら付きを良くするために、聚楽をすべてはがしてから施工に入ります。その結果、相応なコストと工期もかかってしまいますし、せっかくの聚楽壁の風合いもあきらめざるを得ません。
塗装は現実的な聚楽壁リフォーム法
塗り直しが難しくなってきた現代の聚楽壁補修に多く行われるのが塗装です。
メリットは塗り直しほどコストをかけずに風合いを復活させることができるところ。デメリットは塗装にも高い技術を必要としますから、業者さんの選定が難しいところ。表面を塗装でおおってしまいますから、調湿・消臭機能が低くなってしまうデメリットもあります。
しかし何層も塗料を重ねていくうちに小さなキズならばわからなくなりますし、仕上がりは聚楽壁そのもの。高い満足度を得たいならば、塗装リフォームをおすすめします。
まとめ
日本の伝統的な内装である聚楽壁は、現代ではすっかり少なくなってしまいました。理由は仕上げに用いる聚楽土自体が少なくなっていることに加えて、左官職人さんの減少とも言われます。そのため、聚楽壁を塗り直すリフォームも非常に難しくなっています。珪藻土で仕上げ直したり、代わりに壁紙を使うなどの方法もありますが、いったん聚楽をはがす必要がありますから、コストもそれなりにかさみがちです。
そこでよくとられる方法が塗装。これならば聚楽壁の風合いを再現することもできるのです。しかし、この方法は腕の良い塗装職人さんが行うことが前提です。難しいかもしれませんが、業者選びがポイントでしょう。実績などを確認しながら、慎重に選ぶ必要があると覚えておいてください。
