キッチンの出来は、暮らしやすさを大きく左右することがあります。キッチンに手を入れることを前提に、中古住宅の購入を検討している方もいることでしょう。その際、軽視できないないのが、移動を含むキッチンのリノベーション費用。見積りを取ったら、とんでもない額が出てきてびっくりしてしまうかもしれません。
ここでは大ごとになるかもしれない、キッチン移動リノベーションのケースを見ていきます。
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コストがかかる!キッチンの移動
リノベーションでのキッチンの移動には、大きな費用がかかりがち。これは比較的自由なリノベーションができるであろう、一戸建てでも同じことです。
それではキッチンの移動にコストがかかる理由と、特に大ごとになりがちなリノベーション事例についてです。
給排水管のために内装の大幅リフォームが必要
たとえば壁付のI型キッチンを、そのままリビングダイニング側を向く対面式にリノベーションすると考えてみてください。キッチンを移動する距離はわずかですが、工事は大がかりなものとなってしまいます。
キッチンに欠かせない給排水管を新しいシンクまで移動したり延長したりするためには、壁面や床を取り払って骨組みだけのスケルトンにしなければならない場合が多いのです。給排水管をキッチンに合わせて整えた後は、取り払った内装すべてをまた新しく施工しなければなりません。
移動するものは意外と多い
移動が必要になるのは給排水管だけではありません。電気配線やガス管、排気ダクトもあわせて移動することになります。中でも厄介なのがレンジフードの排気ダクト。壁付キッチンなら存在を感じることはあまりないかもしれませんが、移動して対面式キッチンにリノベーションするなら、ダクトを長くのばしたり、通す場所を変えたりする工事が必要になることが考えられます。
ダクトの移設のためには天井も一度取り払わなければならないことがほとんどでしょう。インダストリアルテイストなどでは、そのまま隠さずにダクトを塗装などで仕上げることもあります。しかし、むき出しのダクトがインテリアとマッチしない場合には、ダクトを隠すための天井の内装工事をしなくてはなりません。電線やガス管の移動や延長でも、梁や柱が邪魔になってしまう場合には、工事範囲が予想以上に広くなることも。
さらに大ごとになる階の移動
壁付I型キッチンを少し移動して対面式にするだけでもいろいろな工事が予想されるのです。部屋をまたいでの移動や階を変える移動が大工事になってしまうのは、想像がつくことでしょう。
キッチンを部屋や階をまたいで移動するとなると、移動する道筋すべてをスケルトンにする必要があるかもしれません。ここまで大規模な工事になると、もはやキッチンだけのリノベーションとは言えなくなってきます。住まい全体の間取り変更を考えるフルリノベーションの中で、キッチン位置の変更も取り入れていくことになるでしょう。
リノベーション前提で一戸建て住宅を探すなら、キッチンの移動やレイアウト変更をしなくてもよい物件が見つかればよいですが、どうしてもキッチンを動かしたいときには予算との兼ね合いを慎重に検討しながらプラン作りを進めるようにしましょう。
マンションでも難しい!キッチンの移動
ここからは主にマンションでの注意点ですが、マンションならではの理由でキッチンの移動が難しいケースも見られます。コストをかけても実現が難しいために、あきらめた方がよいということもあり得ます。
排水管が問題となるケース
水圧がかかる給水管と異なり、排水管は傾斜を付けることで、排水を下水道まで導く仕組みになっています。重力で水が高いところから低いところに流れる、という性質を利用しているのです。十分な傾斜の角度(勾配)が得られない場所へは排水管を移動させることはできません。
また、マンションは、建物全体を貫く給排水管のある場所(パイプスペース:PS)から離れるほど水回りの設備を設置するのが難しくなります。PSは動かせないので、もともとスペースに余裕がない上にPSの位置に配管が制約を受けるマンションでは、戸建て住宅に比べて排水管の傾斜角度が問題化しやすい傾向があります。
配管がコンクリートに埋まっているケース
マンションの階を分けるコンクリートの床版、スラブに配管が埋め込まれている物件があります。これは「床スラブ貫通配管」と呼ばれる方法の配管で、リノベーションで問題になることがよくあります。築年数を重ねたマンションや団地によく見られます。
床スラブ貫通配管は、キッチンを移動させたいときに大きな制約になりがちです。設備図面を見ることで床スラブ貫通配管か否かは判断できるので、物件探しの段階からプロにチェックしてもらうと購入前に知ることができるでしょう。
管理規約で禁じられているケース
そもそもマンションの管理規約で、キッチンの移動を禁じていることもあり得ます。リノベーションを考えているなら、管理組合への確認が必要です。
憧れの対面式キッチンで料理が作りづらくなる?!
築古マンションなどで主流の壁付きI型キッチンは、古臭いイメージがあるかもしれませんが、コンロやシンク、ワークトップ、収納が、1カ所にまとまっていて、限られたスペースでも効率よく作業できるようになっています。
一方で、対面式キッチンでは、アイランドタイプならカウンターの周囲に、ペニンシュラタイプなら3方に通路が必要になり、より広い床面積を使うことになるでしょう。もともと壁付キッチンだったスペースに対面式キッチンを入れると、キッチンの作業台やコンロが狭くなって作業がしにくくなってしまうことも考えられます。
また、スペースの関係でシンク、コンロ、作業スペースが分かれてしまう配置になることも。I型に慣れていると、II型やL型のキッチンは使いづらいと感じるかもしれません。
対面式に変えるなどのためにキッチンを移動するなら、料理が作りづらくならないレイアウトやスペースが実現できるよう、注意しましょう。
キッチンの移動で照明や採光も再配置?全面リノベが必要になる?
窓やドア、照明などは、移動する前のキッチンにあわせて設置されています。キッチンのレイアウト変更や移動で、照明や採光がうまくいかなくなることが考えられます。今まで使いやすい位置についていたスイッチやコンセントが使いにくくなる、照明が梁や吊戸棚などに遮られて手元が暗くなる、ということも起こり得るのです。
窓やドア、照明を新しいキッチンの位置に合わせようとすると、全面リノベーションになるかもしれません。
まとめ
想像以上の大工事になりがちな、キッチンのレイアウト変更・移動。多くの費用が必要になるだけでなく、マンションなら工事ができないこともあるのです。リノベーションすることを前提で中古住宅を探しているなら、キッチンのレイアウト変更や移動をしないで済む物件を選べばリノベーションのコストはだいぶ変わってくるでしょう。
キッチンのレイアウト変更や移動をおこなわずに、キッチン設備だけを新しくするなら、コストはぐっと抑えることができます。
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