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照明で広見せ?! 団地リノベーションで知っておきたい照明知識

新しい住まい探しの選択肢として注目を集めつつある団地リノベーション。交通アクセスや周辺環境など魅力的な面も多い団地ですが、リノベーション対象としてみると団地だからこその特徴が制約となることもあります。

今回は、特に照明に注目し、団地リノベーションでありがちなデメリットを照明でカバーする方法や、団地物件の照明計画で注意しておくべきポイントをご紹介していきます。

 

よくある団地リノベのデメリットは照明でカバー

団地リノベーションの良いところとして、環境やアクセスが良好な物件をリーズナブルに入手できることが、まずあげられます。ただ、現在購入できる分譲タイプの団地物件は、築年数が古いものが多く、築30年を超えることも。築年は古くとも躯体は丈夫に作られているので耐震性などは意外と問題がないことも多いそうです。

しかし、築年が古いため、間取りや設備などが建設当時のトレンドを反映していて、現在の生活スタイルと合わないところもあったりします。これから長く暮らしていくには使い勝手がいまひとつ良くないことも多いので、団地リノベーションでは、間取りを変えたり、住まい全体の設備を新しいものに交換したりするなど、フルリノベーションが主流と言われます。

中古の分譲団地をフルリノベーションするにあたって、次のようなポイントがデメリットになることがよくあります。

天井が低い

高度経済成長期に建てられた団地の部屋では、現在のマンションなどに比べて天井が低い例がよく見受けられます。そこで、リノベーションでは、二重天井を取り払ってスケルトン天井(現し天井)にすることで、ある程度天井高を上げる手法が取られることもあります。

壁式構造で間取り変更が限定的

壁式構造とは、建物の重さを壁で支える建築方式で、部屋の中に構造壁と呼ばれる取り壊せない壁がいくつか設けられています。そのため間取り変更が制限され、広い空間を作りにくい場合もあるのです。専門家と相談して、どの程度まで間取り変更ができるのか、見極める必要があるでしょう。

団地リノベーションのよくあるデメリットですが、照明を上手に計画すると、ある程度カバーすることもできます。

・参考:ひかリノベ「団地リノベーションで叶える、手の届く価格で私らしい暮らし」

 

団地リノベで使いたい、広見せ照明テクニック

団地リノベーションのありがちなデメリットである、天井の低さ、間取りを広くしにくい制約。これらを照明でカバーする方法を見ていきましょう。

アップライト(上向きの照明)で天井を照らす

天井の高さがないところで、部屋の中央から強いシーリングライトで明るく照らすと、どうしても圧迫感が出てしまいがち。そこで、壁や天井を上向きの光で照らして抜け感を出し、高さを演出してみましょう。

フロアライトで足元から上向きに照らす、上向きに光を出すブラケットライトで壁を照らす、スタンドライトで天井に向けた光を壁際に置く、といった方法が考えられるでしょう。

多灯照明で奥行き感を出す

限られた広さだからこそ取り入れたいのが、多灯照明です。部屋全体を均一な光で明るくしようとするのではなく、灯りが必要な場所にそれぞれ合わせた照明を置いていくという方法です。

ダイニングテーブルやソファセット、ワーキングスペースなどは十分な明るさのある照明を設置し、動線として通るだけの場所などは必要以上に明るくしないでおきます。明るさのメリハリをつけることで、奥行き感がでて、同じ面積でも広く見える効果が期待できます。

また、部屋の長手方向の水平ラインを強調する照明も、奥行きを感じさせる手法です。例えば、天井やカーテンレール、造作の棚の上下などに間接照明を設置すると、直線が際立って空間が広がっていくように見せる効果も生まれます。

 

団地リノベでは配線に注意、ダウンライトが使えない?

団地リノベーションの照明計画では、照明取り付け位置の変更や天井埋め込みタイプの照明の使用が難しいこともあるので注意が必要です。

団地物件の中には、天井や壁が躯体になっていて、クロスなどの内装を直接躯体に施している場合もあります。建設時の電気配線は躯体に埋め込まれているため、リノベーションで動かすことができません。スイッチやコンセント、ローゼットなどを増やしたり位置を変えたりしようとするなら、新しく躯体の外側に露出させた配線をする工事で対応します。

配線を完全に隠すことは難しくても、露出している配線をまとめて目立たない色で塗装するなど仕上げ方を工夫すれば、気にならなくなることもあります。

また、天井が躯体になっている直天井では、ダウンライトなどの埋め込みタイプの照明は基本的に使えません。天井に埋め込むためのスペースが無いからです。天井高を上げるために現し天井にした場合も同じです。

代わりに、ダクトレールを設置したり、既存のローゼットを利用したりして天井照明を作る方法がとられます。ダウンライトのフラットな天井にすることは難しくても、工夫次第で素敵な天井、天井照明を作ることは可能と覚えておきましょう。

どうしても配線を隠したいという場合には、天井や壁の上に石膏ボードを付けて二重にすることで配線を隠すスペースを作り出す、という手法もあります。天井や壁が二重になった分だけ室内の空間は狭くなってしまいますが、配線の凸凹などをすっきり隠してフラットな仕上げになることで、視覚的にはむしろ広くなったように感じさせる効果もあるそうです。

・参考:アイエス・リビング「旧公団住宅ならではの特色を取込んだ配線工事」

 

まとめ

注目を集めつつある団地リノベーションですが、団地物件ならではの問題点もあることをご説明してきました。天井が低かったり、部屋が狭かったりすることは、照明で見せ方を工夫するとある程度カバーすることもできます。

また、直天井の物件ではダウンライトが使えない、新しい配線を隠せないということも、照明計画に影響してきます。

団地ならではの特徴を理解して、納得のいく団地リノベーションができるようにしたいものですね。