戸建てリノベーション初心者も安心!! RENOVATION Q&A
リノベーションといえばマンションが一般的ですが、最近では「戸建て+リノベ」を選ぶ人も増加中。
しかし、費用がかさむのではないか、中古物件の耐久性をどう見極めればいいのかなど、マンションと比べると不安な点も多いのではないでしょうか?
そこで、初心者が安心してコダテリノベに取り組めるように、プロの意見を交えながら、8つのチェックポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します!
序章 リノベーションとは?
近頃よく聞くリノベーションという言葉。
単に大がかりなリフォームを指すと思っている人も多いのでは?
リフォームや新築との違いなど、今さら聞けない基礎知識を分かりやすくご紹介します。
Q1 リノベーションとリフォームは、どう違うの?
店舗や事務所を併設した住まいを望む人には、階によって用途の使い分けができる戸建てリノベーションはオススメ。写真は1階に妻が営むベーカリーを構え、上階に家族が暮らす。いつでも子どもの姿が見られて安心
A.不便さの解消ではなく、自分らしいスタイルのある住まいづくりが目的
リフォームに比べ、リノベーション(以下リノベ)のほうが最近よく耳にする言葉ですが、両者に厳密な線引きはありません。
そもそも英語のrenovationは建物の改修を指すが、reformは住宅用語ではなく、日本独自の用法といえます。
リノベ専門の設計事務所の草分けとして知られる、大阪でアートアンドクラフト(以下A&C)を主宰する中谷ノボルさんは、両者の違いについて、こう語っています。
「リフォームの目的は、設備が壊れたから直そうといった不便さの解消にありますが、リノベには、多少不便でも最小限の機能でもいい、自分らしい生活スタイルを優先したいというニュアンスがあります。
床・壁・天井を全部はがし、配管や設備も総取っ替えしないと、リノベといえないわけではありません。
例えば、ある女性が「都心で、広いお風呂とキッチンのある、眺めのよい部屋に猫と住みたい」と要望したとします。
そんな一人ひとりの明快な希望に応え、新築時に戻そうとするのではなく、まったく異なる住まいへと変貌させる――それがリノベなのです」
店舗や事務所を併設した住まいを望む人には、階によって用途の使い分けができる戸建てリノベはオススメです。
下記の写真は1階に妻が営むベーカリーを構え、上階に家族が暮らしています。そして、いつでも子どもの姿が見られて安心な作りになっています。
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店舗や事務所を併設した住まいを望む人には、階によって用途の使い分けができる戸建てリノベーションはオススメ。
写真は1階に妻が営むベーカリーを構え、上階に家族が暮らす。
いつでも子どもの姿が見られて安心。
Q2 新築と比べて安さ以外のメリットは?
A.住みたい街に、広くて味のある家が持てるチャンス!
安さを理由に、新築でなくリノベを考える人もまだまだ多いだろうが、実はリノベには、ほかにも様々な魅力があります。
中谷さんいわく、
「古い物件のほうがあとから建てる新築より立地がよい場所を押さえているし、容積率も今より緩い時期に建っているので、空間に余裕があります」
特に、都心で職住近接型の暮らしがしたい人には、オススメです。
また、どっしりした柱や床など、新築にはない趣のあるインテリアが実現できる点もポイントでしょう。
昭和レトロやアンティーク好きの人には、ピカピカの新築よりむしろ魅力的なものになるでしょう。
つまり、中古住宅+リノベという選択によって、住みたい街に、より広く、味わいのある家が持てるチャンスが広がるというわけなのです。
ちなみに、これは新築・中古問わず言えることだが、複数のフロアがある一戸建てならではのよさとは、吹き抜けなど、高さを生かした空間をつくりやすく、階によって用途を分けやすい点。
今すぐでなくても、将来、店舗や事務所を併設する夢がある人は、マンションではなく戸建てをリノベするという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
第1章 物件選び
新築と違って現物を見て買えるのも中古住宅のメリットのひとつ。
リノベーション最大の醍醐味である物件選び。
見学に行く際のチェックポイントや、ハズレ物件を見抜くコツを伝授します。
Q3 リノベしにくい物件ってありますか?
同じように見える木造の家でも、工法が違うと間取り変更の自由度が変わる。柱や梁で建物を支える左のような工法だと変更しやすいが、 壁で建物を支える右のような工法だと、間取りは変更しにくい
A.間仕切り壁が抜けない構造も
間取りを大きく変えられるかどうかは、建物の構造や工法によって変わってきます。
RC造や鉄骨造は構造体だけにしてしまえば、内部の間取り変更はしやすいです。
木造は増改築しやすい構造だといわれますが、ひと口に木造といっても、いろいろな工法があります。
一般に「在来工法」と呼ばれる、柱や梁や筋交いで建物を支える「木造軸組工法」なら、間取り変更の自由度は高いですが、要注意なのは壁が構造体となる「2×4(ツーバイフォー)工法」。
壁を取り払えないため、大きな間取り変更はしにくくなります。また、構造にかかわらず、工場で大量生産された部材を現場で組み立てた「プレハブ工法」も、変更しづらいことが多くあります。
ただ、リノベしにくい構造だからといって、あきらめるのは早い!
「たとえ制約があっても、設計者の知恵次第でおもしろい家はつくれる」と中谷さん。
プロに相談すれば、道は開けるかもしれないのです。
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同じように見える木造の家でも、工法が違うと間取り変更の自由度が変わる。柱や梁で建物を支える左のような工法だと変更しやすいが、 壁で建物を支える右のような工法だと、間取りは変更しにくい。
Q4 見学の際、見るべきポイントは?
A.外見よりハコのよしあしを見抜く。できればプロに同行してもらおう
家を見に行くと、壁紙はボロボロ、キッチンのコンロは油まみれ、中には夜逃げしたままで布団が残っている部屋まであるそうです。
一方では、壁紙を貼り替えたり設備機器を交換したりして、きれいにリフォームして売り出している物件もありますが、そのぶんは価格に反映されてしまい、もったいないのです。
どうせリノベするのだから、外見が汚くてもひるまず、「ハコという素材として見る」姿勢が肝心です、と中谷さんは語ります。
むしろ見るべきは、あとで変えられない部分。
例えば、階高はどのぐらいか、天井板を抜いたらどのぐらい高くなるか、壁を取り払ったらどんな空間になるかを想像する。日当たりや風通し、窓からの眺め、周辺の環境もチェックしましょう。
建物の傷み具合の見方についてはQ5で触れますが、なるべく契約までに一度、建築のプロに同行して見てもらうことが望ましいでしょう。
Q5 耐震性やシロアリ被害をどう見抜く?
A.素人でもできる4つの「目視」。木造ならリノベと同時に改良は可能
古住宅には、耐震性、シロアリ、雨漏りなど、目に見えない弱点への不安がつきもの。
耐震性については、法律が改正された1981年と2000年を境に、求められる耐震性能が高くなったため、築年数がひとつの目安にはなります。
ですが、A&Cの設計監理チーフ、枇杷健一さんはこう語ります。
「マンションと違って、戸建ての場合、前所有者が定期的にメンテナンスしていない例が非常に多く、雨漏りといった二次的な要因で柱や土台が腐るなど、建物の劣化が進みかねません。
古い建物でも、腕利きの棟梁が手掛けた丈夫な建物を建主が大事に修繕してきた家もあれば、新しくても傷み放題の家もあり、一概に新しいほど安心とはいえないのです」
枇杷さんによれば、物件見学には建築のプロに同行してもらうのがベストだが、自分でもできる「目視」のポイントが4つあるそうです。
1. 外壁に大々的なヒビ割れがないか。
2. 1階が駐車場になっているなど、柱や壁の量が極端に少ない構造でないか。
3. 外壁を指でこすってみて指先に白い粉がつかないか(「チョーキング」は外壁塗装劣化のサイン)。
4. 室内の天井に雨漏りや漏水が原因のシミができていないか。
外壁や屋根は補修も可能だが、工事費が一気に増えるので要注意だといいます。
ただ、一般的な木造の建物であれば、まともな設計者や施工業者なら構造上、どこに補強が必要かは分かるし、シロアリの被害があれば部材を取り替えて防蟻処理をするなど、リノベ時に適切な提案をしてくれるので、公的な耐震等級を達成するために、必ずしも多大な費用と時間をかけて耐震診断+耐震改修を行う必要はないのでは、とは枇杷さんの弁。
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1階の壁が少なくビ割れだらけは✕
1階 が駐車スペースで、2階以上 を 柱で支えた「ピロティ形式」 は、 壁の量が少なすぎると地震 に弱いので避けたい。
(伊藤ハムスター=扉・人物イラスト、安田はつね=建物イラスト、アートアンドクラフト/中谷ノボル・枇杷健一・岡本典子=取材協力)
(住まいの設計2017年1・2月号より)