中古マンションをリノベーションするにあたっては、部屋の印象や生活利便性に直接関わる内装や設備をどうするかという点に目が行きがち。しかし、築年数が古い物件になるほど給排水配管の改修や交換の重要度が高まります。目に見えない配管が老朽化していると、水漏れや詰まりといった大きなトラブルの原因になりかねません。
今回は、マンションリノベーションをするにあたって押さえておきたい給排水配管のあれこれについて、詳しく解説していきます。
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給排水配管の老朽化によるリスクとは?
床・壁・天井の内装や水回りの設備などと異なり給排水配管は目に見えないため、リノベーションでは思わず見落としてしまいがちです。おまけに配管のトラブルは前兆があまりなく、ある日突然大問題になるという可能性も。中古マンションで老朽化した給排水配管に気付かず放置してしまうと、次のようなリスクが考えられます。
下階への水漏れが発生して賠償が発生するリスク
マンションの2階以上に住んでいる場合に考えられるのが、老朽化した配管から水漏れが発生し、下の階の住戸に損害を与えてしまうというリスク。部屋内の給排水配管の多くは床下を通っているので、水漏れが起こると下の階に水が回ってしまう可能性が高いのです。水漏れによって下の階にある家電や高級品を壊す、汚すといったことになれば、水漏れさせた部屋の住人が責任を問われるケースもあります。
水回りが長期間使えないリスク
配管は目に見えないため、たとえ水漏れが発生したとしても、すぐにどこの配管が原因かわかるとは限りません。もし原因判明まで時間がかかれば、まとまった期間水回りが使えない可能性もあります。浴室、トイレ、キッチンといった水回りは生活の要ですから、使えない間は不自由な生活を強いられることになるでしょう。
配管の改修に費用が発生するリスク
配管の改修や交換が必要になれば、基本的に費用は住人負担となります。水漏れによって床・壁や設備に影響が出ていると、大きなコスト負担になる可能性もあるのです。
マンションの給排水配管の変遷
上で紹介したリスクを回避するには、老朽化した給排水配管を事前に改修しておかなければなりません。最近の配管では長寿命な素材が用いられるようになっていますが、中古マンションだと築年数によって寿命のあまり長くない配管がそのまま設置されているケースもあります。
マンション住戸内の給水配管を例に、配管素材が時代によってどのように変遷してきたのか見てみましょう。
- 1960〜1970年ごろ:水道用亜鉛メッキ鋼管(配管用炭素鋼鋼管に亜鉛メッキを施したもの)
- 1970年ごろ〜:硬質塩ビライニング鋼管
- 1980年ごろ〜:ステンレス鋼管
- 近年:架橋ポリエチレン管など
古い素材ほど耐用年数は短く、水道用亜鉛メッキ鋼管ならば15年程度、硬質塩ビライニング鋼管ならば15〜25年程度とされています。一方、ステンレス鋼管や架橋ポリエチレン管であれば30年程度が耐用年数の目安とされているのです。
(参考:配管保全センター)
部位別にみる配管の材質と寿命
給水管を例に見てきましたが、マンションの住戸内には他にも多くの配管が設置されています。続いては、主な部位別に配管の材質と寿命を紹介していきましょう。
給水管
先ほど紹介したとおり、1960〜1980年ごろに建てられたマンションで主に使用されている「水道用亜鉛メッキ鋼管」は15年程度、「硬質塩ビライニング鋼管」は15〜25年程度が交換の目安。この年代築の物件で給水管が改修されていない場合、老朽化しているリスクが高いと考えられます。
雑排水管
雑排水管も築年数が古い物件だと「亜鉛メッキ鋼管」が使われているものも多く、20〜30年程度で交換の必要が生じます。最近の物件の雑排水管で使われている塩ビ管は、耐用年数が30年以上と長寿命です。
(参考:リノライフ)
給湯管
給湯管は現在耐熱性の塩ビ管が広く用いられており、他の部位と同様に耐用年数は30年以上が目安です。ただ、1960〜1980年ごろのマンションでは銅管を使用している物件も多くありました。銅管の耐用年数は20〜25年程度であり、この年代に建てられた物件では給湯管も老朽化している可能性があります。
汚水管
水漏れが起きると被害が大きくなりやすいのが汚水管。かつてのマンションで広く用いられていた鋳鉄管は40〜60年と長寿命です。ただし、サビが発生しやすい点は要注意。最近では、他の排水管と同じく塩ビ性の配管が使われる場合もあります。
(参考:不動産取引健全化協会)
ガス管
ガス管は銅管が使われることも多く、その場合はあまり交換する必要がありません。塩ビ管などを使用している場合には、他と同じく30年程度が耐用年数の目安と考えられます。
(参考:水道救急センター)
追い焚き用ペアチューブ
給湯器から浴槽、浴槽から給湯器へお湯を移動させる2本の管がセットになった追い焚き用ペアチューブ。給湯管と同じ材質が使われているのが一般的で、銅管であれば耐用年数20〜25年程度。塩ビ管であれば30年以上が目安です。
配管が老朽化していたらどうすればいい?
築古マンションをリノベーションしようとしたら赤っぽい水が出てきた、排水の詰まりや流れの悪さが気になるといった場合、給排水配管が老朽化している可能性があります。老朽化が判明したら、なるべく早めに改修や交換工事を実施するのがおすすめ。配管工事の方法は大きく次の2種類です。
更新(取替)工法
既存配管を撤去して新たな配管を設置する方法です。工期が長くかかるものの、配管の寿命をより長くすることができます。
更生(ライニング)工法
既存配管の内部に樹脂などでコーティングし、耐用年数を延ばす方法。更新工法に比べて工期が短くて済むのがメリットです。
まとめ
中古マンションリノベーションでは、目に見える内装や設備のことにばかり目が行きがちです。しかし、築年数が古くなるほど配管が老朽化している可能性も高く、水漏れなど大きなトラブルにつながるリスクがあります。理想や思いの詰まったマイホームで長く快適に暮らしていくためにも、給排水配管の状況をしっかりと確認し、必要に応じて改修や交換を検討するようにしましょう。
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