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リノベの新スタイル、アメリカ発インテリアトレンド「バイオフィリックデザイン」とは?

アメリカのPinterest社(ピンタレスト社)がユーザーの検索結果をもとに発表する2022年のトレンド予測(Pinterest Predicts)のひとつに「バイオフィリックデザイン」を選定し、インテリア業界で注目を集めています。

パンデミックによる孤立や不安に大きく支配されたここ数年。人々の健康と幸福を増進するような癒しのお部屋作りが重要なテーマとなっている今だからこそ役に立つこのトレンドは一体どのようなものなのでしょうか。リノベーションや模様替えの際の参考になるよう、具体的な実践方法とともにご紹介していきます。

バイオフィリックデザインとは?

バイオフィリックデザインとは、室内環境に自然や、自然を模した要素を取り入れることです。

このコンセプトは、1980年代にアメリカの生物学者が提唱した「人間には先天的に自然を愛する本能的欲求がある」という「バイオフィリア仮説」の概念がベースになっています。

自然との視覚的なつながりを持つ落ち着いた空間づくりに重点が置かれ、ウェルビーイング(持続的な幸福感)と心身の健康の増進、ストレスの軽減、生産性の向上などの効果が期待されています。

バイオフィリックデザインを実践する方法

現代社会、特に都市部での生活では、周りを建物やアスファルトなど人工的なものばかりに囲まれてしまいがちです。自然との繋がりを感じたいという人間の基本的な欲求を満たすためには、日常生活の中で意識的に自然を取り入れる必要があります。

ここではバイオフィリックデザインを実践するための方法をいくつかご紹介します。

自然光を最大限活用する

ビタミンDは日光を浴びることによって皮膚で合成可能なことから太陽のビタミンとも表現され、私たちの心身の健康に不可欠と言われています。日光を遮るようなブラインドや厚手のカーテンは開け放ち、家全体に最大限の自然光を取り込むように心がけることがポイントです。

新築やリノベーションの際には、天窓や大きな窓、ガラスドアなど光を入れるためのあらゆる方法を検討してみると良いでしょう。窓が小さい場合には、大きな鏡やガラスのテーブルなど、より多くの反射面をインテリアに取り入れるのもひとつの方法です。

新鮮な空気を取り込む

次のポイントは、窓を大きく開けて、新鮮な空気を取り込むことです。雨や風の音、鳥の声などにも耳を傾けてみてください。お部屋のよどんだ空気を洗い流し、屋外と瞬時につながることができます。

風上と風下、二面に開口があればクロスベンチレーション(自然換気)になり、ファンに頼ることなく空間を空気が通過できます。家具を配置するときも、空気の通り道を考慮するようにしましょう。新鮮な空気を吸うことは爽快で、それだけでも気分を高めてくれることも。

観葉植物を取り入れる

三つ目は、どの部屋にいても植物が見える、または囲まれるように、たくさんの観葉植物を配置することです。自然界との繋がりを感じられる、健康的な環境作りに役立ちます。

初心者の方はお手入れが簡単な観葉植物をデスクに置いたり、キッチンの窓辺にハーブの鉢を置くなど、小さなことから始めてみると良いでしょう。

室内ガーデニングの経験が豊富な方は壁一面を植物で埋める、天井からフックで吊るす、階段にグリーンを並べる、または複数段のプラントスタンドなどを使うなど、あらゆる目線の高さから植物が見えるように工夫してみてください。

曲線を取り入れる

四つ目のポイントは曲線を取り入れること。人工的に作られたものとは対照的に、自然界に直角や直線は少ないものです。家具やインテリア雑貨は、柔らかいエッジのものを選ぶようにします。

例えばカーブしたソファ、丸いテーブル、丸いカーペット、アーチ型のドアや窓、さまざまなパターンのクッションなどです。自然界に由来するような曲線を活かしたデザインは空間に柔らかさをもたらし、居心地を良くする効果が期待できます。

自然素材を取り入れる

五つ目は自然素材の活用です。現代のような消費社会では素材選びの際にサスティナビリティ(持続可能性)を考慮することはとても重要で、その点においてもバイオフィリックデザインが大きな役割を担っています。

お部屋のあらゆる空間に、木、石、藤、綿、ウール、麻、竹などできるだけ自然の素材を取り入れてみましょう。これらの素材は環境に優しいだけでなく、想像力をかき立て豊かな表情をインテリアにもたらします。

屋外の自然を意識した家づくり

最後に、自然に囲まれた地域にお住まいの方は、その利点を最大限に活かした家づくりを心がけると良いでしょう。バイオフィリックデザインでは建物内から見える景観も重要な要素になります。

窓をフレームと捉え自然をウォールアートのように縁取る、または、屋内と屋外が簡単に一体化するようなバルコニーやデッキを設置して、住まいと自然をつなぐ流れを作りましょう。

まとめ

いかがでしたか。実は以前よりアメリカではもちろん日本やヨーロッパでも、バイオフィリックデザインがもたらす良い効果は建築家やデザイナー、雇用主の関心を集めていて、すでに多くのオフィスや商業施設で導入されています。

日常生活にポジティブな影響を与えてくれるバイオフィリックデザイン。豊かなおうち時間を過ごすためのアイデアのひとつとして、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

writing:チチ(アメリカ在住)