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上質な光沢となめらかな肌触りのシルクラグ。自宅でお手入れできる?

なかなか手が出せない高級品、シルクのラグ。シルクという繊維を使う魅力は、美しい光沢となめらかな触り心地、緻密で華やかな装飾性を楽しめるところなどではないでしょうか。

本物を見ると繊細な美しさにうっとりしてしまいますが、同時に、美しいまま使っていくのはいろいろと気を使わなければならないところがありそう、という思いも頭をよぎるかもしれません。

この記事では、シルクのラグのある生活をイメージするお手伝いになればと、シルクの魅力や特徴、使用する際の注意点をまとめてみました。

なめらかな肌触りと美しい光沢が魅力のシルクのラグ

蚕の繭(まゆ)から紡いだ細い絹糸を何本もより合わせて作られるシルクの繊維は、古くから人の暮らしに取り入れられてきました。見る方向によって色味を変える艶やかな光沢感はシルクならでは。また、人の肌に触れる際に気持ちよく感じられる特徴も併せ持った高機能繊維でもあります。

シルクの光沢は、繊維が複雑に重なり合った構造に光が当たり多方向に反射しているために生まれると言われています。さらに染色でも発色が良いので華やかな印象に。

また、シルクの肌触りのよさも、長く愛されてきている要因の一つでしょう。実は、シルクはコットンよりも優れた吸水性を持ち、コットンと同等の放湿性があるとされます。また、繊維の内部は微細な穴が並んだ多孔質の構造になっており、空気を抱え込んで断熱効果を発揮しますので、保温性も高い素材です。湿度と温度を調節してくれるシルクは、夏はサラッと、冬は暖かく感じられる快適さを持っているといえます。

・参考:シルクとくらす(片倉工業)「シルクの基礎知識 シルクについて

シルクラグを置く場所はどこがいい?

シルクのラグは使う場所に注意したいものです。以下で、詳しく見ていきます。

シルクは繊維が細く、摩擦に弱いという特性もあります。そのため、リビングなど人が集まり動きの多いところや、ダイニングチェアの出し入れなど、家具で頻繁にこすれる場所での使用は避けましょう。

水に濡れると固くなってしまうという特徴もあります。水のかかるところや湿気の多い場所では使わないように心がけてください。水は、色落ちや色むら、歪みなどの原因にもなり得ます。

また、シルクは紫外線に長くあたると変色してしまうので、直射日光があたる場所からも遠ざけるようにしましょう。日の当たる部屋で使う場合には、窓にレースのカーテンを付けて、日の当たる時間帯は閉めておくなど、直射日光を遮る対策を行うことをおすすめします。

シルクラグの最高峰、あこがれの名品

シルクのラグといえば、世界的に有名な美術工芸品ともいえる手織りの製品があります。シルクのラグが高級品だというイメージにもつながるでしょう。以下では、繊細で華やかな模様と独特の力強い色彩が特徴的なペルシア絨毯と、立体的で優雅な花模様が印象的な中国緞通について紹介します。

ペルシア絨毯

ペルシア絨毯といえばウール製のものが中心ですが、シルク製のものもあります。ウール製のペルシア絨毯は芸術品のような高い装飾性と土足や屋外での使用に耐えうる実用性を兼ね備えています。一方、シルク製のものは耐久性ではウールにかないませんが、敷物としてだけでなく、壁に掛けるなどタペストリーのように使われることも多いということです。

ペルシア絨毯の生産国であるイランにはいくつもの絨毯産地がありますが、中でもコム(クム、Qum)のシルク絨毯は有名でファンも多いようです。シルクの産地でもあるコムは、ペルシア絨毯の産地としては新しいほうなのですが、現代的な需要に合わせたデザイン性の高いシルクの絨毯を生産しており、日本でも人気があります。

・参考:ペルシア絨毯専門店ギャラリー「ペルシア絨毯辞典」

中国緞通

 
 
 
 
 
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ペルシアからシルクロードを通って、パイルのある織物の技法が中国に伝わり、独特の技法やデザインを取り入れた織物に発展しました。中国で「ダンツ」と呼ばれるこの敷物は、日本では音から漢字を当てて緞通(段通、だんつう)と呼ばれています。

平織で薄手のペルシア絨毯に対し、中国緞通は厚みがありボリューム感が違います。また、中国緞通は長さのあるパイルを絵柄の輪郭に沿って刈り込んでいく、カービング加工と呼ばれる独特の技法があります。これによって、描かれたモチーフが浮き出て立体感のある仕上がりにもなります。

中国緞通もウールが使われることが多いのですが、シルクのものはより繊維が細いので緻密な模様を表現することができるとして、美術品としての価値があるものもあります。伝統的には花や壺などモチーフを大きめに配置し、淡い色合いでまとめているパターンが多いですが、時代に合わせてモダンなデザインのものも作られているということです。

・参考:ペルシア絨毯専門店ギャラリー「中国緞通の歴史と特徴」

シルクのラグをキレイに長く使うために気を付けたいこと

日頃のお手入れは?

日頃のお手入れは、掃除機で埃などを取り除くことがメインです。週に1度程度は、掃除機掛けがをしたいところです。毛足の目に沿ってゆっくりと掃除機をかけましょう。この時、ラグをめくってラグの下にも掃除機をかけておくと湿気対策にもなります。

もし、シミや汚れが付いてしまったら、なるべく早く取り除きましょう。中性洗剤を少量加えたぬるま湯を用意し、タオルなどの布を浸してかたく絞ります。汚れの裏にあて布をして、かたく絞った布で汚れを叩き、あて布に移し取ります。

シルクは酸やアルカリで傷ついてしまいますので、アルカリ洗剤は使わず、中性洗剤を使うようにしましょう。

しまっておくときはどうする?

折り癖が付かないよう、丸めて保管するのがおすすめです。表面を巻き込むように裏地を外側にして巻きましょう。できれば,芯になる棒などがあるとより安定します。立てかけておくとしわや癖が付いてしまうことがあるので、寝かせて保管するようにしましょう。

また、虫食い対策として防虫剤が切れないようにすること、カビ対策として湿度の低い日に時々陰干しすることも覚えておきたいポイントです。

クリーニングに出す時とは?

基本的に、シルクのラグを自宅で洗濯することはできないと思っておきましょう。ラグ全般に共通することですが、洗濯表示が付いており、洗濯機や手洗いで洗えるとされているものでなければ、自宅での洗濯は避けることが無難です。

洗濯してしまうと、シルクの魅力である光沢が悪くなったり、色落ち・色あせ・色むらなどが発生したり、歪んでしまったりする危険性もあります。

ひどく汚れてしまったり、時間が経って表面がくすんだような色味になってしまうこともあります。そのような場合には専門の業者にクリーニングを依頼するとより確実です。シルクを傷めないクリーニングができる業者を探して相談するか、ラグを購入した店舗に相談してみてもよいでしょう。

・参考:いい家具ネット「ペルシャ絨毯のお手入れ方法 – ペルシャ絨毯読本」

まとめ

美しい光沢やなめらかな触り心地が魅力のシルクのラグですが、上質なものはお値段も張ります。合成繊維のラグに比べれば、繊細なシルクはお手入れにも気を使うところが多くあります。それでも、シルクのラグのある生活に魅力を感じて迷っているなら、使い方やお手入れのポイントをおさえ、販売店には気になることをしっかり聞いて、不安を取り除いて検討されてはいかがでしょうか。