複数の入り口でアクセスがしやすかったり、通り抜けることで動線がスムーズになったりと、ウォークスルークローゼットは便利な設備です。しかし、造ることができるお家が限られているのもウォークインクローゼットです。なぜなら、充分な幅がないと、通り抜けができなくなるからです。
ここでは、理想の幅や最低でも確保したい幅など、ウォークインクローゼットの幅について考えていきましょう。
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理想のウォークスルークローゼットの幅はどれくらい?
ウォークスルークローゼットのレイアウトは、通路の片側に棚やハンガーパイプを配置したI型と、両側に配置したII型の2種類になります。ウォークインクローゼットならI型やII型以外に、コ型やL型のレイアウトもありますが、通り抜けを考えるなら、突き当たりに棚やハンガーパイプをレイアウトするわけにはいきません。
ですから、ウォークスルークローゼットの幅はI型のレイアウトなら「洋服の幅+通路幅」、II型のレイアウトなら「洋服の幅+通路幅+洋服の幅」と考えます。
洋服の幅は50~60cm
吊るした洋服はよほど特殊なものでない限り、50〜60cmの幅に収まります。理由はハンガーサイズの目安が36cm~52cmで、肩幅と生地の厚みを合計しても60cmを越える服は、それほど多いとは考えられないからです。
最少の通路幅は60cm
家を設計する場合、廊下に必要な幅は最低でも75〜80cmと考えられています。理由は、人がすれ違ったり、家具などを搬入したりするのにそれくらいの幅がスムーズだからです。しかし、ウォークスルークローゼットの通路は、人一人がスムーズに通り抜けられるように、洋服の幅と同じ60cm程度確保できれば良いでしょう。
理想のウォークスルークローゼットの幅は約1.8m
以上のことから考えるとウォークインクローゼットの幅は、I型のレイアウトなら60cm×2、II型なら60cm×3が適当と考えることができるのです。そして、ウォークスルークローゼットのレイアウトは収納力が高いII型が理想と考えることができますから、理想のウォークスルークローゼットの幅は約1.8mと考えることができます。
1.8m=約1間、間(けん)というモジュールを考える
理想のウォークスルークローゼット幅の1.8mは、日本の建築に置けるモジュールである「1間(けん=1.82m)」とほぼ同じです。モジュールとは長さの基準となる単位のことで、マンションや一部の住宅メーカーを除いて、今でも建築業界で広く使われています。
理由は、古くから日本で使われている長さの単位(尺貫法)で使い勝手が良いからです。たとえば畳1枚の長辺の長さは(地域差はありますが)1間ですし、土地の広さの単位である1坪(約3.3平方m)は1間×1間が元になっています。日本製の家具の多くも、間や尺(1間=6尺)、寸(1尺=10寸)に基づいて造られています。
古くから使われている間というモジュールが、新しく考案された設備であるウォークスルークローゼットでも有効なところが面白いところですし、建築の奥深さを感じさせてくれるところでもあります。
ウォークスルークローゼットは最低でも1.2m幅は欲しい理由
ウォークスルークローゼットの理想の幅は1.8m=約1間とはいえ、それだけの幅を確保するのは難しいでしょう。ならば、どれくらいの幅を確保すれば良いのでしょうか。
「I型」レイアウトで我慢するなら1.2m
通路の片側に棚やハンガーパイプを配置したI型レイアウトをウォークスルークローゼットに採用するなら、60cm×2=1.2mの幅でも充分といえます。しかし片面が単なる壁になってしまい、収納力が弱まってしまうのが残念なところです。
吊り物を収納しないという選択
ウォークスルークローゼットに充分な幅が取れないなら、幅を取る吊り物を収納しないという選択もあります。吊り物は別のところに収納して、ウォークスルークローゼットにはTシャツや下着など、たたみ物を収納すればよいのです。タオルなども収納して、脱衣場や洗濯室と寝室の動線にしたがって配置すれば、非常に優れた家事動線ができあがるでしょう。
まとめ
ウォークスルークローゼットの幅は最低でも1.2m、理想なら1.8mは欲しいところです。しかし、1.2~1.8mの幅を確保するのも、とりわけマンションのリノベーションでは難しいかもしれません。
そんな場合はウォークスルー「クローゼット」と考えずに、ウォークスルー「本棚」や「パントリー」と考えれば、通路幅の60cm+棚幅を確保すれば大丈夫ということになります。ウォークスルークローゼットではなく大型のウォークスルー収納と考えれば、実現できそうです。
ですが、通路幅60cmを必要とするウォークスルー収納は、便利ではありますが居住面積を削るものであることも忘れないでください。無理をしてウォークスルークローゼットを造るより、単なるクローゼットの方が良いケースも多々あるのです。
(参考:東急ハンズ -ヒント・ファイル- 「ハンガーの正しい選び方」)
(参考:All About 住宅・不動産「90センチと1メートルの嫌な関係」)
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