家の間取りを変えられることは、リノベーションの醍醐味のひとつではないでしょうか。理想の暮らし、快適な住まいを手に入れる具体的な手段と言えますね。しかし、どんな住まいでも自由自在に間取りを変えられるかというと、そうとは限りません。
今回は、どのような住まいが間取り変更リノベーションに向いているか、または向いていないのか、建物の構造に注目して解説していきます。
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間取り変更リノベーションは取り除けない壁・柱がポイント
間取り変更でできることにはどのようなことがあるでしょう。例えば、壁を取り除いて広い空間を作る、壁を作って個室を増やす、水回りや廊下の位置を変える、部屋の大きさのバランスを変える、などが思いつくかもしれません。
間取り変更リノベーションでは多くの場合、壁や柱の撤去、あるいは移動を伴うことが予想されます。そこで問題になるのが、その壁や柱は取り除いてしまってもよいのかどうか、という点です。建物の構造によっては、取り除きたいと思った壁や柱が、上階の重さを支えていたり、建物全体の耐久性にとって必要であったりすることもあるのです。
建物を支えるために必要な壁や柱は、原則として残さなくてはなりません。間取り変更のしやすさを考えると、室内に取り除けない壁や柱がなるべく少ない方が自由度が高くなると言えるでしょう。
とはいえ、個別の壁や柱について、取り除けるのかどうかの判断は見た目だけではなかなか難しいところがあります。そこで、建物がどんな構造なのかを調べましょう。構造の種類が分かれば、間取り変更の妨げになってしまいそうな抜けない壁や柱が多いのか少ないのか、基本的な傾向も分かります。
戸建て住宅で間取り変更リノベーション!
日本の戸建て住宅に採用されている構造を大まかに分けると次のようになるでしょう。
●木造:在来工法(木造軸組み工法)、2×4工法
●非木造:鉄骨造(重量鉄骨造、軽量鉄骨造)、鉄筋コンクリート造、ブロック造、など
戸数が最も多いのは木造で、戸建て住宅全体の9割を超えるという統計もあります。一方で、今後は非木造の住宅の割合が増えていくと見込まれています。
参考:「平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」(総務省統計局)
間取り変更リノベーションに向いているのは在来工法や重量鉄骨造
戸建て住宅に多い木造の中で、「在来工法」と呼ばれる工法は比較的間取り変更の自由度が高いとされています。軸組工法とも呼ばれるように、軸となる柱や梁で建物の重さを支えています。また筋交を入れて横からの力にも耐えられる仕組みになっています。一部に取り除けない柱や筋交はありますが、それ以外の壁は取り除くことができるとされています。
在来工法は歴史も長く着工数も多いので技術や知識の蓄積が進んでいます。対応できる工務店、施工業者も多いので、好みに合う提案・施工をしてもらえる業者を探しやすいという利点もあります。
非木造の中で間取り取り変更に向いているとされる構造に「重量鉄骨造(S造)」があります。重量鉄骨造を含む鉄骨造とは、建物の骨組みとなる柱や梁にスティール、つまり鉄を使った金属である鋼を使っている構造です。
重量鉄骨造は、厚みが6mm以上ある鋼材を使っている構造で、太く丈夫な鋼材を柱や梁に使うことで相対的に少ない本数の柱で建物を支えられるようになっています。広い空間が作れる構造なので、間取りの自由度が高いと言われます。
一方で、鉄骨造でも鋼材の厚みが6mmに満たないものは「軽量鉄骨造」と呼ばれます。こちらは間取り変更に向いているとは言えないので、構造を調べるときはよく確認しましょう。
また、鉄骨を使った構造には「鉄筋コンクリート造(RC造)」もあります。これはコンクリートの躯体に鉄骨を組み合わせて強度を持たせた構造で、大きく「ラーメン構造」と「壁式構造」に分かれます。間取り変更に関してはラーメン構造であれば向いており、壁式構造では制限がかかることもあるとされています。詳しくはマンションの項目でご説明します。
間取り変更リノベーションに向いていないのは軽量鉄骨構造や木造2×4工法
木造では、「2×4(ツーバイフォー)」と呼ばれる工法で建てられていると、間取り変更がしにくいとされています。枠組壁工法という名称が使われることもあるように、枠組みとなる壁を組み立てて行く構造です。建物の重さを壁で支えているので、取り除けない耐力壁が間取り変更では制約になることが考えられます。
非木造の住宅では、「軽量鉄骨造」が間取り変更リノベーションに向かない構造とされています。それは鉄骨の強度を補うために筋交を入れた壁が必要になるからです。建物を建てた後に筋交を取り除くことは難しく、リノベーションでの間取りの変更には制限があると言えます。
参考:HAGS「事前に確認しておきたい!戸建てリノベーションの注意点」
マンションで間取り変更リノベーション!
マンションのリノベーションでも間取り変更をすることはできますが、構造によって制限がかかることもあります。中古マンションを購入してリノベーションをする予定なら、物件探しの段階から専門家に見てもらって、希望する間取り変更ができる物件を探すのも一案でしょう。
なお、マンションなど多くの集合住宅には管理規約があり、リノベーションも管理規約に従わなくてはなりません。構造上は可能な間取り変更でも、管理規約で禁止されていれば実現できないこともあるので、注意しておきましょう。
間取り変更リノベーションに向いているのはラーメン構造
マンションで間取り変更リノベーションに向いているのは、「ラーメン構造」と呼ばれる、柱と梁を中心に重さを支える構造の建物だと言われています。丈夫な柱に梁をしっかり溶接し、箱型の空間を作り出しているので、その中にある壁を減らしても耐久力を維持できると考えられています。
ラーメン構造のマンションを見分けたいときは、部屋の四隅に注目しましょう。ラーメン構造では部屋の四隅に柱が通っているので、部屋の角が内側に出っ張っていることが多いのです。マンションの間取り図でも四隅の柱を確認できるでしょう。
間取り変更リノベーションに向いていないのは壁式構造
マンションでの間取り変更リノベーションに向いていないとされているのは、「壁式構造」と言われる構造です。これは、壁や天井・床といった”面”で建物の重量を支えている構造です。壁式構造では構造上必要な耐力壁が室内にあって、理想の間取りづくりの妨げになることもあります。
参考:HAGS「マンションをリフォームしたい!間取り変更の方法や注意点をご紹介します」
間取り変更に向いていない構造でもあきらめたくない!
間取り変更には向いていない構造でも、リノベーションでできることはあります。間取りも含めて、住まいづくりで叶えたい希望を吟味してから、専門家に相談してみましょう。プロの目線での解決策提案も期待できます。
例えば、次のような方法が考えられます。
■抜けない柱や筋交を見せる
壁の中に隠されていた柱や筋交を残して、壁材だけを取り除くという方法があります。柱と筋交だけになれば視線が通るので開放感も生まれるでしょう。残した柱や筋交は、塗装したり角を取ったりしてインテリアに合わせるのもいいですし、造作の収納の一部に取り込んでしまうという方法もあるでしょう。
■補強工事をして強度を維持する
抜けない壁や柱を撤去する代わりに、新しく建物を支える構造を作るなど、強度を補強する工事をすることで間取り変更が可能になることもあります。コストは増えてしまうので予算との兼ね合いに注意しましょう。
■内装で印象を変える
内装のワザを取り入れることで、広さや開放感を演出することもできるでしょう。部屋を仕切るドアや壁にガラス窓を取り入れれば視線の抜け感も変えられます。アクセントクロスを取り入れる、フローリングの張り方を変える、間接照明を取り入れる、というような視覚効果を活用する方法もあります。
間取り変更に向いていないとされる構造でも、技術の進歩や施工数の増加に伴って取り除けない壁、柱への対策が増えてきていることも考えられます。それぞれの構造、工法に関して知識や経験が豊富な施工業者を探して相談してみると、より多くの解決策を提案してもらえるかもしれません。
参考:HAGS「壁を壊すだけ?リビングの間取り変更リフォーム」
まとめ
間取り変更リノベーションには、室内の壁や柱を撤去しても強度を維持できる構造が向いています。木造の戸建て住宅や壁式構造のマンションは、建物を支える壁や柱が室内にあるので、間取り変更で制限が出てくることもあるでしょう。
間取り変更に向かない構造でも、良い方法が見つかるかもしれません。専門家に相談して解決策を提案してもらいましょう。
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