こんにちは。不動産ライターのchimonです。今回はコンクリートとモルタル、セメントの違いについてのお話です。
「コンクリート」「モルタル」「セメント」はいずれも建築材料で、見た目が似ていますよね。そのため、それぞれの違いを説明できるという人は少ないかもしれません。これらの材料は似ているようで、実際には異なる特徴があり、使われる場面も違っています。
この記事では、「コンクリート」「モルタル」「セメント」の特徴と違いを解説していきます。
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すべては「セメント」から始まる?
最初にご紹介するのは「セメント」です。セメントは灰色の粉末で、水や液体を混ぜることで接着したり(接着性)、固まったりする(水硬性)という性質があります。
建築材料のセメントは何からできている?
建築材料として用いられるセメントにはいくつか種類があり、もっとも多く使われているのが「ポルトランドセメント」です。ポルトランドセメントは、石灰石や粘土などを混ぜて焼いた「クリンカ」に石膏(せっこう)を加え、粉末状にしたもの。
乾燥後の色や硬さといった性質が、イギリスで産出される「ポルトランドストーン」に似ていることから名付けられました。
・参考:一般社団法人セメント協会「セメントとは」
コンクリートやモルタルはセメントから作られる
先ほどご紹介した通り、セメントは粉末状の素材であり、そのままでは建築材料として使うことはできません。水などを加えて加工することによって、初めて建築材料として使用できるのです。
この時、セメントを加工したものこそが「コンクリート」や「モルタル」と呼ばれます。つまり、セメントはコンクリートやモルタルを作るための一次加工品と言えるでしょう。
粉末状のセメントは保管性や運搬性に優れているため、工事現場まで運搬した上で、使用する直前にコンクリートやモルタルに加工します。ただ、一度に大量のコンクリートが必要な場合は、ミキサー車でセメントを混ぜ、コンクリートに加工しながら運搬するのです。
「コンクリート」はこんな素材
続いて「コンクリート」がどのような素材なのか、ご紹介していきましょう。
セメント+水+砂+砂利=コンクリート
コンクリートは、セメントに水・砂・砂利を混ぜ合わせて作る建築材料です。コンクリートの素材として使う砂・砂利のことを「骨材」と呼び、中でも粒子の大きな砂利を「粗骨材」、粒子の小さな砂を「細骨材」と呼びます。この後ご紹介しますが、セメントにも細骨材は含まれていますが、粗骨材が含まれるのはコンクリートのみ。
細骨材と粗骨材がセメントと結合することで、建築材料として十分な強度を生み出しているのです。
コンクリートの特徴とは?
セメントと骨材を混ぜて作られるコンクリートは、次のような特徴を有しています。
●強度が高いため、柱や梁、壁といった建物の構造体に使用される。
●圧縮力に強い一方、引っ張る力に対しては弱い。
●粘性が高いので、加工の自由度は低い。
コンクリートは強度が高いのが特徴ですが、引っ張る力には弱いという難点があります。この弱点をカバーするため、コンクリートの中に鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」が広く採用されているのです。
「モルタル」はこんな素材
コンクリートと同じく、セメントから作られる建築材料「モルタル」についても特徴を見ていきましょう。
セメント+水+砂=モルタル
モルタルは、セメントに水・砂を混ぜ合わせて作る建築材料。コンクリートと異なり、粗骨材となる砂利が含まれていません。
モルタルの特徴とは?
セメントと細骨材を混ぜて作られるモルタルには、次のような特徴があります。
●柔軟性があるため、建物の外壁やレンガ、ブロックの接着剤として使用される。
●装飾性が高いので仕上げ材にも適している。
●強度が不十分なので、建物の構造体には使用されない。
左官職人がコテを使って塗り付けるのがモルタルです。モルタルは粗骨材が含まれていないので、柔らかく加工がしやすい点が長所と言えるでしょう。
目地用モルタルとは?
モルタルは乾燥収縮によりクラック(ひび割れ)や亀裂が生じやすいため、モルタル打設の際には目地が必要になります。大きな一枚岩のように見えるコンクリート床も、よく見れば決められた間隔で目地が設けられているのが分かります。モルタルやコンクリートのクラックは、目地を設けることによりある程度防ぐことができると考えられています。
この目地材にモルタルが使われることがあります。いわゆる目地用モルタルで、モルタル仕上げに使われるモルタルとは性質が違います。
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モルタルのメンテナンスについて
モルタルのひび割れは、ひび割れの大きさにより適用する補修工法が違います。日本コンクリート工学会発行の「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針(2013)」によれば、モルタルのひび割れ対策として「ひび割れ被覆工法」、「注入工法」、「充填工法」の3種類の補修工法が挙げられており、適用可能なひび割れ幅を、それぞれ0.2mm以下、0.2~1.0mm、1.0mm以上としています。
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モルタル施工の事例
モルタルとコンクリートで迷うこともあるでしょう。そんな時は事例を見てイメージを膨らますのも一つです。
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「コンクリート」と「モルタル」を比べてみた
コンクリートとモルタルについてそれぞれの特徴を見てきましたが、両者を比較して違いを確認していきます。
まず、素材としての強度はコンクリートに軍配が上がります。粗骨材が文字通り「骨」の役割を果たし、セメントと結合することで強い強度を発揮するのです。一方で、コンクリートには柔軟性があまりありません。その点、モルタルは強度こそコンクリートに劣りますが、柔軟性は高いのが特徴。
こうした特徴から、強度が最優先の構造体にはコンクリート、柔軟性や施工のしやすさが求められる外壁や内装にはモルタルが用いられるのです。
まとめ
今回は、建築素材として混同しがちな「コンクリート」「モルタル」「セメント」の違いについてご紹介してきました。
コンクリートとモルタルはどちらもセメントから作られる建築材料ですが、粗骨材が含まれているのがコンクリート、含まれていないのがモルタルと覚えておけばOKです。それぞれの特徴を理解した上で、用途に適した材料を選ぶよう心がけましょう。
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