日本では周辺の大気の循環によって、夏場の湿気と冬場の乾燥が繰り返されます。どちらも程度がひどすぎるとそこに暮らす人々の健康や、住宅・家財などに悪い影響をもたらすとされています。
住宅の湿度管理は、快適で健康的な生活空間を維持するうえで重要なトピックの一つです。そこで、空気中の水分を吸収したり放出したりする調湿建材が、適度な湿度を保つ効果があるとして注目されています。
今回は、お部屋の湿度を調節する、調湿建材についてお話していきます。
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湿気・乾燥対策ができる調湿建材とは
お部屋の湿度を調節する機能があるとされる調湿建材は、湿度が高い時には湿気を吸収して部屋の湿度を下げ、乾燥すると湿気を放出して空気に潤いを与える機能を持った建材のことです。
つまり、呼吸するように湿気を吸収したり放出したりするのですが、これは調湿建材が内部に小さな穴を無数に持っていて、空気を抱え込む構造になっているからなのです。
高温多湿の日本の住宅で昔から使われてきた建材には、調湿機能を持った自然素材が多くあります。漆喰の塗り壁や土壁、イグサから作られる畳、和紙を使う襖(ふすま)や障子などがその代表といえるでしょう。
また現在では、調湿機能を持った多くの種類の建材が工業的に生産されています。木材や、粘土、天然の石や鉱物などを加工して、タイルやパネル、塗り壁材という形で調湿機能を持った建材が商品化されています。
参考:一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会「調湿建材とは」
参考:長松住宅「長松住宅建材のこだわり ― 健康住宅 ―」
湿気・乾燥対策ができる調湿建材:床材
続いては、湿気・乾燥対策ができる調湿機能を持った建材を紹介していきましょう。まずは、インテリアの土台となる床材です。
無垢フローリング
HAGSアイテム:無垢フローリング 桐(施工イメージ)
天然木の丸太を板にした無垢材は、調湿機能を持つ建材として知られています。無垢材を床に敷き詰めた無垢フローリングの床は、湿度の高い梅雨時などでもサラッとした触り心地が期待でき、お部屋のジメジメ感も軽減されるそう。乾燥が気になる冬場には、無垢材から水分が放出され空気に潤いをプラスしてくれると言われています。
同じ木材を使った床材でも、合板フローリングでは基本的に、調湿効果は期待できません。また、無垢フローリングでも木材表面の孔を覆ってしまう造膜型塗料を使うと、調湿効果が発揮できなくなるので、注意が必要です。
参考:HAGSコラム「無垢フローリングと湿気の絶妙な関係〜湿気にまつわるメリット・デメリットとは?」
畳
和室の床に敷く畳は、本来、イグサと藁を使って作られています。植物の繊維と繊維の隙間に空気を抱き込むことができ、調湿効果があるとされています。また、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸着する空気清浄化、熱の伝導をさえぎる断熱効果、足にやさしいクッション性など、多くの嬉しい機能を持っています。
畳は、日々の掃除や数年ごとの交換などメンテンナンスに手がかかるというイメージもあるかもしれません。洋室メインの現代の日本の住宅に合わせて、お手入れしやすくおしゃれな畳製品も増えていますので、インテリアに取り入れてみてはいかがでしょうか。
湿気・乾燥対策ができる調湿建材:壁材
塗り壁
塗り壁とは、左官職人などが塗り壁材をコテなどで塗りつける壁の仕上げ方法の一つです。一般的な壁紙(クロス)仕上げと比べて、工期が長くなったり費用が掛かったりするデメリットはありますが、調湿効果で快適な空間づくりに役立つと、注目されています。
塗り壁材の調湿効果は、主に天然の素材が練り込まれていることから生まれています。HAGSで人気の塗り壁材、「珪藻土 KEISOUDO 左官塗り壁材」に使われてる主な成分を見てみましょう。
植物プランクトンの殻の化石が粉になった「珪藻土」、ミクロの多孔質構造をもつ鉱物「ゼオライト」、高温で焼成された火山性の砂「シラス」、漆喰の主な原料「消石灰」は、「粘土」や「セルロース」と混ぜ合わせて使われてきました。
いずれも、目に見えない無数の穴を持つ多孔性の素材で、調湿効果や有害物質を吸着する機能を持つとされています。
参考:HAGSアイテム「珪藻土 KEISOUDO 左官塗り壁材」
壁紙
壁紙は、塗り壁よりも馴染みがあってリノベーションやDIYでも取り入れやすい建材の一つでしょう。一般的なビニールクロスは空気を通さないので、湿気・乾燥対策には調湿効果のある機能性壁紙を選ぶことが重要です。
調湿効果を持つ機能性壁紙にはいくつか種類があります。通気性のよい石膏ボードと合わせて使う「通気性壁紙」、吸水性ポリマーを表面に使った「吸放湿壁紙」、珪藻土の粉末を練り込んだ「珪藻土壁紙」などです。
壁紙ですので、トイレや洗面所などの水回り、クローゼットの中や玄関など、家中どこでも、湿気の気になる場所に使えるところが便利ですね。
参考:HAGSコラム「湿気に強い壁紙とは?壁紙の種類を知ってジメジメを乗り切ろう」
ペイント塗料
HAGSアイテム:珪藻土 KEISOUDO ペイント壁材
DIYでも施工可能で、多様な色彩や質感が楽しめる壁用のペイント塗料。ペイント塗料でも、左官用の塗り壁材に使われている天然成分を用いて、調湿効果を発揮できるものが登場しています。ローラーで壁に塗っていくだけという手軽さで、お部屋のイメージチェンジと同時に調湿効果もプラスできます。
ウッドパネルなら、天然木の調湿効果を持つ無垢材を壁や天井に使うことができます。壁紙仕上げとは一味違った、ナチュラル感や個性的な演出を楽しめる内装材です。写真の事例では一面の壁にパネルが使われていますが、腰高までの下半分に使ったり、天井に使ったりと、アクセントとして部分的に取り入れたりと、幅広い使い方ができる建材です。
無垢材の特性として、吸放湿によって膨張したり変形したりすることがあります。施工時には、木材同士がぴったりくっついてしまわないよう、適当な隙間をあけておくことが基本です。
HAGSアイテム:無垢パネル 羽目板ピノアース-1818mm
タイル
タイルは、粘土に鉱物などを混ぜて成形し、高温で焼き上げた建材です。硬くて丈夫、水にも強い上に、色や形状のバリエーションが豊富で多彩な質感や表情を出すことができます。水回りや土足で使う床などによく使われます。
タイルにも調湿効果を持つものがあります。例えば、LIXILのエコカラットはリノベーションの現場でも人気があります。日本伝統の漆喰や土壁をヒントに現代の技術を使って作られた建材で、吸湿効果は漆喰の数倍も高いとされています。
まとめ
お部屋の湿度を快適に保ってくれる調湿建材は、湿気・乾燥対策にぴったり。床や壁に調湿効果のある建材を使うと、お部屋の湿度が調節されて室内の環境はより快適になり、カビが発生しにくくなって住宅の耐久性が上がる効果も期待できるでしょう。
リノベーション後も長く暮らしていく住まいに、調湿建材を検討してみてはいかがでしょうか。
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