階段は家の中でも特に機能性や安全性が求められる場所。メゾネットマンションや2階建て以上の戸建てにおいては、上下階をつなぐ大切な動線であり、階段をリフォーム・リノベーションすることで、家の快適性が大きくアップする可能性も秘めています。
今回は「完全版」と題して、階段リフォーム・リノベーションの基礎知識や費用相場などあれこれを解説していきます。これから自宅のリフォーム・リノベーションを検討している方は参考にしてください。
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もくじ
1. 階段リフォーム・リノベーションの事例
階段をリフォーム・リノベーションすると聞いてもピンとこないという方もいることでしょう。まずは、おしゃれな階段リフォーム・リノベーションの事例を3つ紹介します。他にも魅力的な事例がありますので、気になる方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
参考記事:階段リフォームリノベーションで参考にしたい事例6選
事例1:無垢材の手すりが味の階段
一見シンプルですが、階段の踏み板と手すりに温もりを感じるオークの無垢材を使用したこだわりの階段。手すりを角材のまま使用し、階段の傾斜に合わせて角度に変化を持たせることで、シンプルな中にもアクセントを加えています。
事例2:築70年の階段が生まれ変わる
築古物件だと階段が暗くて圧迫感がある場合も。こちらの事例では築70年の物件にあった階段を、場所はそのままに開放的な空間へ大胆リノベーション。スケルトン階段にすることで、階段裏の空間にも光が差し込むよう工夫されています。
事例3:階段は開放的なリビングにあるステージ
家の中では脇役に回りがちな階段ですが、このようにリビングから見える場所に設置することで主役級の役割を持たせることも可能です。階段リフォーム・リノベーションの可能性を感じられる事例と言えるでしょう。
2. 階段リフォーム・リノベーションの基礎知識
階段のリフォーム・リノベーションを考えるにあたっては、階段ならではの事前にチェックしておきたい事項があります。ここでは、そんな基礎知識を2つ紹介していきましょう。
階段の規定サイズ
上下階をつなぐ大切な動線である階段は安全性が強く求められる場所。そのため、建築基準法施工令で守るべきサイズが規定されています。主な内容は次の通りです。
- 階段と踊り場の幅:75cm以上
- 蹴上げ(けあげ):23cm以下
- 踏面(ふみづら):15cm以上
参考:e-GOV法令検索「建築基準法施行令」
蹴上げとは階段における段差の高さのこと、踏面とは階段の足を置く部分の奥行きのことを指しており、自宅の階段をリフォーム・リノベーションする場合も上記サイズを満たすことが求められます。
参考記事:階段のリフォームリノベーションを検討する前に〜押さえておきたい注意点とは?
階段の種類
階段と一口に言っても、形状は大きく分けて5つの種類があります。
- 直階段
上下階を真っ直ぐつなぐシンプルな階段 - かね折れ階段
途中で直角に折れ曲がっているL字型の階段 - 折り返し階段
途中で折り返すことにより、上から見るとコの字型もしくはU字型になっている階段 - 回り階段
折り返し階段と同様コの字型もしくはU字型となっており、折り返し部分にも段差のある階段 - らせん階段
中心の柱を軸として、らせん型に踏み板が配置されている階段
種類ごとの特徴やメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考記事:階段には大きく5つの種類がある!種類ごとのメリット・デメリットをご紹介
3. 階段リフォーム・リノベーションの時期・タイミングは?
リフォーム・リノベーション工事を実施している期間は、基本的に階段を使うことができません。工期中は上下階の行き来ができなくなるため、どのタイミングでリフォーム・リノベーションを実施するかというのが重要です。階段リフォーム・リノベーションを検討するのにおすすめなのは、次の4つのタイミング。
- 見た目を良くしたいとき
- 不具合が生じたとき
- ライフスタイルが変化したとき
- 階段以外の場所をリフォームするとき
4つのタイミングそれぞれにおけるポイントを確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
参考記事:階段リフォーム・リノベーションをする4つのタイミングとは
4. 階段リフォーム・リノベーションのポイント・注意点
続いては、階段リフォーム・リノベーションにおいてあらかじめ意識しておきたいポイント・注意点を解説します。
既存の階段の撤去が伴うリフォーム・リノベーションの注意点
階段リフォーム・リノベーションの中でも、既存の階段から購買を緩やかにしたりかけ替えをしたりする場合、既存の階段を一度撤去する必要があります。そんな既存階段の撤去を伴うリフォーム・リノベーションにおける注意点を見ていきましょう。
- 勾配を緩やかにする工事を行う際の注意点
お年寄りや小さな子どもがいる世帯において安全対策の観点から行われることの多い、勾配を緩やかにする階段リフォーム・リノベーション。しかし、勾配を緩やかにするためには、蹴上げを低くして段数を増やす必要があります。一段を上がりやすくなる分、上下を行き来する際の歩数が増える点は要注意です。 - 階段そのものをかけ替える際の注意点
階段が老朽化している場合には、階段そのものをかけ替えて新たなものにする方法もあります。一から作り直すのでさまざまな希望を盛り込みやすいですが、工事中は階段が使えなくなる点は要注意。工事中は下の階だけで生活できる状態にしておくなど、工事中の生活に支障がないよう準備しておきましょう。
検討段階で確認しておきたい注意点
階段は上下を貫く空間であるため、一般的な居室に比べて工事上の制限が多いと言えます。リフォーム・リノベーションの検討段階で確認しておきたい注意点として、次の4点を意識しておきたいところです。
- 基本的に階段の位置は変えられない
階段の位置は家全体の動線に大きく影響するため、移動するのは基本的に難しいと考えておきましょう。建物構造の問題で天井に穴が開けられないなど、物理的に階段の移動が難しい場合もあります。 - 規模によって確認申請が必要
家を新築したり大規模リノベーションした際、建物が建築基準法を遵守した作りになっているか確認するために必要な建築確認申請。階段リフォーム・リノベーションの場合、工事の規模が大きくなるとあらためて確認申請しなくてはならないこともあります。 - 工事中階段が使えない
先ほどもお伝えしましたが、リフォーム・リノベーションの工事中は階段が使えません。 - 安全面に関する注意点
階段は安全性が求められる場所であることから、リフォーム・リノベーションにあたっても安全面に配慮しなくてはなりません。階段の安全面で意識したいのが、滑りにくくすることと足元が暗くならないようにすること。この2点を意識すると安全で使いやすい階段を実現できます。
参考記事:階段のリフォームリノベーションを検討する前に〜押さえておきたい注意点とは?
参考記事:階段をリフォーム。そのポイントとは。
5. 階段リフォーム・リノベーションの種類と費用相場
階段リフォーム・リノベーションは、工事する目的や実現したいことによっていくつか種類があります。気になる種類別の費用相場を紹介していきましょう。
段差を増やす/減らす
階段の傾斜を緩くするために段差を増やしたり、階段を省スペース化するために段差変更する場合、工事費用は20〜50万円が目安。既存階段を撤去してから新たな階段を設置するとなれば、コストは高くなり100〜150万円程度が相場です。
参考記事:階段の段数変更。費用相場はどのくらい?押さえておくべきポイントも詳しく解説
収納を増やす
階段そのもののリフォーム・リノベーションをするだけでなく、デッドスペースになりがちな階段下のスペースを収納として利用するという方法もあります。既存階段を活用し、階段下を収納として整備する場合の費用相場は全て込みで10〜15万円程度を見込んでおけばいいでしょう。詳しくはこちらの2つの記事をご覧ください。
参考記事:階段下収納をリノベーション!奥行きを活かして便利空間に
参考記事:階段下に収納スペースを作りたい!メリット・デメリットや費用を解説
掛け替え
階段を掛け替えるリフォーム・リノベーションは、既存階段と同じ位置で古いものから新しいものへ掛け替える場合と階段の場所を変更する場合の2パターンがあります。このうち、階段の位置は変更せずに、古い階段から新しい階段へ掛け替える場合の費用相場は60〜100万円程度です。
参考記事:階段の架け替えリフォームの費用相場は?業者に依頼する際のポイントも解説
位置変更
動線を見直すために階段の位置を変更したいという場合もあるでしょう。そもそも位置変更できるかは家の構造にもよりますが、可能な場合の費用相場は150〜300万円程度が目安。間取りの大幅な変更が生じないのであれば、もう少しコストダウンできる場合もあります。
参考記事:【目的別】階段のリフォーム費用。DIYでできる事も紹介!
階段の床材変更
踏み板の汚れや傷が目立つ、滑りにくい階段にしたいといったときには床材を変更するリフォーム・リノベーションがおすすめ。既存の床材の上に新しい床材を重ね張りするのであれば、一般的に15〜30万円程度で工事が可能です。よりモダンでスタイリッシュなイメージにしたい方は、モルタル仕上げの階段を検討してもいいでしょう。
参考記事:【目的別】階段のリフォーム費用。DIYでできる事も紹介!
参考記事:階段のモルタル仕上げについて
手すり設置
お年寄りのいる世帯などでは、安全性のためリフォームで手すりを設置する場合もあるでしょう。業者に依頼して手すりを設置するだけの工事であれば5〜10万円程度が相場。折り返し階段や回り階段だと手すり形状が複雑なため、15万円程度かかることもあります。
なお、家族に要介護認定を受けている人がいる場合、介護リフォームの一環として実施するのであれば「高齢者住宅改修費用助成制度」を受けられる可能性も。補助金についてはこの後の章であらためて紹介します。
参考記事:階段手すりの高さに決まりはある?階段手すりの押さえておきたいポイント
参考記事:階段の手すり取り付け費用<業者vsDIY>使える補助金は?
6. 階段リフォーム・リノベーションの費用を安く抑えるコツ
階段リフォーム・リノベーションの工事費用はできるだけ安く抑えたいところですよね。そこで活用したいのが、階段リフォーム・リノベーションを対象にした諸制度です。
先ほど少し触れた通り、家族に要介護認定を受けている人がいる場合、介護リフォームの一環として階段リフォームを実施すれば「高齢者住宅改修費用助成制度」による補助金を受けられる可能性があります。この制度を使えば工事費の9割、最大20万円の補助を受けられるのです。他にも地方自治体独自の補助金制度が設けられていることも。
また、住宅の性能向上を目的とした階段リフォーム・リノベーションでは減税措置を受けられることもありますので、事前にどういった制度があるのかチェックしておくといいでしょう。
参考記事:階段のバリアフリー化リフォーム・リノベーション。活用できる補助金・減税措置は?注意点も解説
7. 階段リノベはDIYできる?
補助金や減税措置などの諸制度を使っても、階段リフォーム・リノベーションはある程度まとまった費用がかかるもの。DIYすることでコストをさらに抑えたいという方もいるかもしれません。そもそも階段リノベーションはDIYできるのでしょうか。
シートを貼るなど小規模なら可能(階段リノベDIY)
結論から言うと、階段リノベも小規模なものであればDIYすることも可能です。例えば、滑り止めシートを貼って安全性を高めるといった簡単なリノベであれば、初心者でもDIYできるでしょう。また、夜間の安全確保のために足元照明を追加するのもDIYで十分可能。DIYでも、お年寄りや子どもに優しい階段を作ることはできるのです。
参考記事:【目的別】階段のリフォーム費用。DIYでできる事も紹介!
プロに相談する
階段本体に手を加えるレベルのリフォーム・リノベーションとなると、原則プロに相談するのがおすすめ。階段での大掛かりな作業を素人がやるとケガの危険があるだけでなく、仕上がりによっては使用中の危険につながる可能性もあるためです。階段の工事は生活動線にも大きな影響を与えるので、多少コストはかかってもプロに依頼して最短で工事を終わらせるのが得策と言えます。
参考記事:階段のリフォーム・リノベーションはDIYか業者か?それぞれのメリットを紹介
照明を変えるだけでも印象が変わる
大がかりな工事をしなくても、階段の照明を変えるだけでも印象は変わります。階段は家庭内でも事故が多く、視認性を確保することが求められる場所です。ただ、反対に他の場所と比べて明るすぎても危険。階段が適度な明るさになるよう照明を選ぶといいでしょう。
階段照明は一般的なダウンライトやペンダントライトだけでなく、壁付け照明や足元照明などさまざまな種類があります。詳しくはこちらの記事で解説していますので、気になる方はご覧ください。
参考記事:知っておきたい階段照明の種類と選び方のポイント
参考記事:安全でおしゃれに照らせる階段照明の高さ・位置とは
まとめ
上下階にまたがる家で生活するのであれば、階段は毎日必ず通るであろう重要な場所。リフォーム・リノベーションをする際には居室や水回りを優先しがちですが、階段も安全性や機能性を高めるべく改修や機能更新を検討してみてはいかがでしょうか。毎日通る動線が気持ちのいい空間になれば、日々の暮らしも快適になることでしょう。
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