間取りや水回りの配置も変えることができる全面(フル)リフォーム・リノベーション。家族のライフスタイルや好み・こだわりに合わせて、自由度高く住まいを変えられるのが魅力です。一方で、大きな工事なので、費用や期間など不安を感じることあるかもしれません。
今回は、「全面(フル)リフォーム・リノベーションのガイド〜種類・費用・事例まとめ〜」と題し、気になる情報をまとめてお伝えしていきます。
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もくじ
1.全面(フル)リフォーム・リノベーションとは
全面(フル)リフォーム・リノベーションとは、基本的には全ての部屋にリフォーム・リノベーションを施した場合に使われます。例えば基礎や構造体となる柱や壁のみの状態にする「スケルトン」はいわずもがなフルリノベーションですが、LDKのみをスケルトンにし、居室の間取りは変えずに内装を刷新する場合もフルリノベーションと言われます。つまり、全ての居室に何かしらのリノベーションを施すとフルリノベーションと言われるのが現状です。
次に、全面(フル)リフォーム・リノベーションを検討しているときに、比較対象となる言葉との違いを見ていきます。
建て替え
戸建て住宅の場合、老朽化が進んでくると「建て替え」も視野に入ってくるのではないでしょうか。建て替えが、既存の建物をすべて解体して更地に戻すのに対し、全面(フル)リフォーム・リノベーションは、建物の基礎や柱などの構造部分は残して利用します。
部分(既存残し)リフォーム・リノベーション
また、住まいで傷みや使い勝手に問題を感じる箇所がある場合には、居室を絞ってリフォーム・リノベーションする「部分リフォーム・リノベーション」や、使えるところはそのまま活かす「既存残しリフォーム・リノベーション」という手法もあります。
このように、部分的なリフォーム・リノベーションで済むのか、全面(フル)リフォーム・リノベーションをするべきなのかの判断は、専門家と相談するのが確実ですが、築年数も一つの目安になります。築20年以上になったら、状態によっては全面(フル)リフォーム・リノベーションを検討することもありうるとも言われています。
また、20年も経てば、住まいに暮らす家族のライフステージにも変化があるものです。お子さんが生まれて家族が増えたり、お子さんが巣立って夫婦だけの暮らしになったりと、生活スタイルの変化に対応した住まいに変えるために、全面(フル)リフォーム・リノベーションをする、というパターンもあるでしょう。
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2.全面(フル)リフォーム・リノベーションの費用相場、その他にかかる費用
住まい全体を新しくする全面(フル)リフォーム・リノベーションには、ある程度まとまった額のお金が必要になるとして、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
全面(フル)リフォーム・リノベーションの費用相場
リノベーションの中心相場は1,000〜1,200万円程度とも言われています(東京都内で70平方メートルの中古マンションをリノベーションする場合)。この金額に含まれるのは、「物件取得費」「工事費」「手続き・引越し費用」などです。
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リフォーム・リノベーションに付随して必要になる費用
リノベーションをすると、物件購入やリノベーション工事の費用のほかにも必要になる費用があります。
例えば、工事のための手続きでは印紙代がかかります。全面(フル)リフォーム・リノベーションでは、工事期間の仮住まいや荷物の置き場所が必要になり、引越作業も発生しますので、その費用も必要です。物件や工事の費用の支払いにローンを組むなら、契約に伴って保証料や手数料などが必要になります。
このように全面(フル)リフォームでは、物件や工事以外にも必要になる諸費用があり、その額は概ね工事費の5%~10%程度とも言われています。こういった諸経費も資金計画上、あらかじめ見込んでおくようにしましょう。
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3.事例別!全面(フル)リフォーム・リノベーションの費用を見る
全面(フル)リフォーム・リノベーションは、目安となる費用感はあるものの、実際には素使用する材や設備、補強の必要性などによって大きく変わってきます。そこで指標となるのが事例です。費用帯別に3つご紹介します。
全面(フル)リフォーム・リノベーション事例1|費用1445万円。補強を施し古き良きを活かした古民家リノベ
・リノベ費用:1,445万円(購入当時:築40年)|一戸建て
こちらの事例は湘南の古民家フルリノベーションです。内部は劣化が進んでいたため耐震補強を施しての施工とのこと。
和室の天井・障子など使えるものを活かしながら、床材には無垢、壁には漆喰や本物の竹などを取り入れて意匠性もUPしながらのリノベーションとなりました。
特に玄関ドアはお施主様が惚れたという古建具を採用されています。それにあわせてドア枠を制作し、まるでもともとあったかのような佇まいに。
もとあるものを活かすというのはまさにリノベーションの真骨頂。良いものに手入れをして永く愛用していく、そんなスタイルの方におススメです。
全面(フル)リフォーム・リノベーション事例2|リノベ費用1140万円。素材感が活きるカラーリングリノベ
・リノベ費用:約1,140万円|昭和59年2月築
クールさと柔らかさをもつタイルをキッチンに据えて、リビングには同系のグレーパネルを。ダイニングテーブルは、色味をライトな床材にあわせつつヘリンボーン柄で動きを添えまています。そんなフルリノベーションで広くしたリビングをアイアンの存在感が引き締めていますね。ソファのフレーム、ダイニングチェア、ライティングレール、書斎コーナーのチェアから稼働棚のレールと、全体が心地よくまとまっています。
全面(フル)リフォーム・リノベーション事例3|リノベ費用約700万円。ビンテージ・足場板・珪藻土、そしてDIYも
・リノベ費用:約700万円|築37年|施工面積50.00m2
こちらは丸窓が印象的な都会のビンテージリノベーション事例。壁面は躯体現しをベースにトイレや洗面室の一部の壁は珪藻土やタイル、好きな色でDIYを施すなどワクワクするような仕上げになっています。床材にはビンテージを引き立てるような濃淡のある無垢材のミモザをチョイスし、壁掛けTVの壁にはチップの木目が楽しめるOSB合板という構造材を採用。そして大きなポイントとなるのが、古材の足場材を使った棚。50m2という空間を緩く仕切りつつ、お気に入りの雑貨をたくさんディスプレイするための工夫なのだそう。
4.事例別!部分リフォーム・リノベーションの費用を見る
中古物件+リノベーションの魅力は、なんといっても必要部分のみのリノベーションだけでも、住まうことができるということ。予算が限られていたり、ライフステージの変化が見通せない時などは、必要部分に絞ってリノベーションすることも選択できるのです。それでは部分リフォーム・リノベーションの事例を見ていきましょう。
部分リフォーム・リノベーション事例1|既存残しとDIYで費用節約
・工事費:850万円(税・設計料込)
・3人家族
自然素材やグリーンのナチュラル感と、無機質な素材との組み合わせをテーマにしているこちらの事例ですが、庭や駐車場があって窓が多いという理想の物件に出会ってしまったこと、頭金を用意しなくてもローンを組めたことなどの条件が重なって、ハイペースでリノベーションが決まったそうです。
こちらの事例では、キッチンや玄関土間の壁面収納をDIYで取り付けています。バーカウンター風のキッチンや、洗面のL字カウンターテーブルなど、どうしても譲れないところには予算を掛けて、見えないところやDIYできる棚などは削って、コストを調整したそうです。
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部分リフォーム・リノベーション事例2|300万円台。リノベ済み中古物件でLDKに集中してリノベーション
・300万円台
・家族暮らし
こちらの事例は、リノベ済みの中古物件を購入し、LDKだけを再リノベーションしています。もともときれいな状態だったということですが、LDの狭さを解消するために隣り合う居室の仕切りを壊して一つの空間にするリノベーションを行いました。
緑のタイルが印象的なキッチンは、設備は入居時に新しいものが入っていたのでそのまま使っています。フローリングも張り替えず、入居時のものを使っているそうです。
壁付きキッチンですが、カウンターを追加してアイランド風にも作業することができるようになりました。もう一つ、リノベーションで加えたのが、造作の本棚。収納する本に合わせたサイズや室内の雰囲気に合わせた素材でオーダーした本棚は、インテリアによくなじんでいます。
使えるものはそのまま、足りないところだけ加えていく、という方向性がはっきりしておりて、費用をおさえることにつながっています。
部分リフォーム・リノベーション事例3|380万円。理想を追求したキッチンが主役のLDKに
・300万円台
リノベーションのきっかけは、使い勝手が悪いと感じていた間取りだそうです。今回の部分リノベーションでは土間と、ダイニング隣接の和室を取り込んで、LDKとして使えるように間取り変更がされました。
LDKの主役は理想を追求したキッチン。少し小さめというキッチンスペースに合わせられるオーダーメイドキッチンを選択、譲れない条件の食洗器も導入しました。ステンレスのトップは継ぎ目がなくお手入れ簡単。キッチンを入れ替えたことでストレスが減って生活が充実したそうです。
予算面では、キッチン重視の優先順位を貫き妥協しなかった分、後からでも刷新できるお風呂などは手を付けませんでした。
5.リフォーム・リノベーションで、希望も叶えて費用を抑える3つのポイント
リフォーム・リノベーションは、無理のない予算で計画することが大切です。希望通りの内容を実現できる、満足度の高いリフォーム・リノベーションを実現しつつ、費用を抑えることができたらうれしいですよね。プラン作りで予算オーバーになってしまいそうなときに、見直してほしいポイント3点をご紹介します。
●リフォーム・リノベーションの目的を明確にする
何のためにリフォーム・リノベーションをするのか、という根本的な目的をはっきりさせておくことは、プラン作りや工事にかかわるさまざまな判断の根拠になります。いくつかの目的がある場合には、優先順位を付けておくと、迷った時に判断基準となるでしょう。
●リフォーム・リノベーションが必要な範囲を見極める
使用するものが同じ素材であれば、工事面積が狭いほど費用が縮小されます。全面(フル)リフォーム・リノベーションが必要なのか、部分的なリフォーム・リノベーションで十分目的を達成できるのか、今すべき箇所と数年後でも大丈夫な個所を分けるなども有効です。専門家に相談しながら、十分に検討しましょう。
●バリューエンジニアリング(VE)による調整
予算をオーバーするようなプランになってしまったら、金額を下げる調整が必要になります。そこで、価値を下げずにアプローチを変えることで費用を抑える、バリューエンジニアリング(VE)を活用しましょう。
一部の工事をなくしたり、設備のグレードを下げたりといった単なるコストカットでは見積書の金額は減らせますが、希望していた内容を実現できず、満足感の低い、中途半端ないリフォーム・リノベーションになってしまうかもしれません。
VEでは目的を達成するために大切なこと(価値、バリュー)を見極め、柔軟に方法を変えながらコストをコントロールしていきます。リノベーション会社の担当者に、目的や予算についてしっかり伝えて、提案してもらえるようにしましょう。
■参考記事
リフォーム・リノベーション全面必要?部分でOK?必要性を見極めるポイント
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6.全面(フル)リフォーム・リノベーションの注意点
考えなけれならないことがたくさんあるリフォーム・リノベーションですが、特に次の3点については早めに対策をしておきましょう。
●リフォーム・リノベーションの目的をはっきりさせる
予算の項目でも上げましたが、リフォーム・リノベーションでどのような住まいにしたいのか、といった目的を明確にしておくことは、計画や工事の全体にかかわってくることであり、とても重要です。
●頼りになるパートナー選び
全面(フル)リフォーム・リノベーションでは、専門的な知識を持って一緒に住まいを作っていけるリノベーション会社を見つけましょう。リノベーションを決めたらすぐに相談に行ってみるとよいでしょう。物件選びの段階から担当者に立ち会ってもらったり相談したりできると、希望するリノベーションができる物件かどうか見極めてもらえます。
●資金計画も早めに準備
全面(フル)リフォーム・リノベーションでは支払いにローンを利用するケースがほとんど。どのようなローンを利用するのか、頭金はどのくらい用意するのか、といった資金に関すること柄についても、早めに見通しを立てるようにしましょう。各社ローンについてのセミナーも開催しているので利用してみると良いでしょう。転職を視野に入れていたり、頭金が足りないかもといった相談も早めにすることで、自分にあったローンを見つけることができます。
■参考記事
失敗しないリノベーションのポイント
リノベーション予算を正しく使う手順
リノベーションの前にチェックするポイント
7.全面(フル)リフォーム・リノベーションで使える補助金・税制度
大きなお金が必要になる全面(フル)リフォーム・リノベーションですが、公的な補助金や減税制度を利用することもできます。申請手続きが工事の前であったり、制度自体に応募の締め切りが決まっていたりすることもありますので、早い段階で情報収集をして準備しておくことが重要です。
補助金や減税制度は、それぞれの制度の目的に合った内容の工事を対象としています。バリアフリー化や省エネ性能の向上、耐震性能の向上などにかかわる工事なら対象となる可能性が高いといえます。また、建物や工事内容について細かい条件が決まっていますので、リノベーション会社や工務店の専門家に協力してもらいましょう。
■参考記事
リノベーションその前に!税制度・補助金をチェックしよう
まとめ
住まいの骨組みを残して、内装や設備をまとめた一新する全面(フル)リフォーム・リノベーション。間取りも大きく変えられるなど、理想の住まい、希望する生活スタイルを実現する手段として注目されています。
リフォーム・リノベーションで達成したい目的と、コストのバランスを上手にとって、満足感の高いリフォーム・リノベーションにしましょう。
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